2024年4月24日

心理セラピストへの長い道のり

このブログは、日本にいる私の家族に我が家の近況を報告する意味もありますので、今日はうちの娘の次の研修先が決まったことを書こうと思います。

現在大学院2年目の娘ですが、前期はある公立病院のリハビリテーション科で研修をしているんですが、実際にどんなことをしているかと言いますと患者さんへの心理カウンセリングをしているんです。
 
学生ですから報酬はありません。カウンセリングは一人で行いますが、監督者であるベテラン臨床心理士の指導を受けながら行っています。

後期の研修先が決まっていなかったんですが、やっと司法精神医療施設で研修をすることが決まったんです。

刑務所で犯罪者を相手にする仕事になると聞いていたんですが、刑務所ではありません。オーストラリアには「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」(Forensic Disability Services)と呼ばれるものがありまして、刑事司法制度に関わる事件を起こした人々の中で精神障害や重篤なメンタルヘルスの問題がある人達にサポートと治療を提供する様々なサービスが含まれます。

重大な他害行為を行った犯罪者が犯行時に心神喪失状態だったという話を皆さんも聞いたことがおありでしょう。

犯罪者に精神障害があった場合には、責任能力がなかったとされて罪を問われず、代わりに医療施設で強制的に入院治療を受けさせる場合がありますよね。そうすることで犯罪の再発を防止し、犯罪を犯した者の社会復帰を促すわけですけど。

これを悪用する犯罪者もいるんですよ!

精神障害や犯行時の心神喪失状態を偽って罪を逃れようとするとか、刑務所ではなくて医療施設に入院することを企むとかね。

「カッコーの巣の上で」という映画がありましたけど、あの映画の主人公は刑務所の強制的な労働から逃れるために精神障害を偽って病院に入るわけですけど、ああいう人達がいるのですよ。

犯罪を犯した人々が、本当に精神障害があるのか偽装しているのか、精神障害は責任能力を問えないほど重症なのか。娘がすることになったのは、こういうことを判断する精神鑑定の仕事だそうです。

娘が将来やりたいと思っている仕事とは違います。娘は心的外傷体験(トラウマ)による心の問題を抱えた人を治療する心理セラピストになるのを目指しているそうですから。

大学に入ってから今年で8年目。大学院に入るために就労経験が必要だったので2年間は働いていますから8年もかかっているんです。

今年無事に大学院を卒業できたら、来年から2年間は実務経験を積むために再び指導を受けながら心理セラピストとして働きます。その間は低給料だそうですが給料はもらえますから、レストランでアルバイトをする必要はなくなります。

その2年間が終わったらやっと一人前になるんだそうですからね、10年がかりなのですよ。

頑張っています。


経済的には苦労していますが、アルバイトをしているレストラン・カフェで残った食べ物をもらえるので食費がほとんどかからない暮らしだそうですよ。

「ダンプスター・ダイビング」というのもやっていますしね。スーパーの業務用ゴミ廃棄コンテナからまだ食べられるのに廃棄された食品を勝手にもらって来るというやつです。

親からの経済的な支援ゼロでこれまでやって来たわけですから大したもんだと思いますし、そういうことができたのもオーストラリアの教育の仕組みのおかげです。

そして、何度も話題にして来ましたけど、娘は大学生になった頃はパニック障害で家から出ることが困難だったわけですよ。

大学まで行くだけで大変な苦労をしたわけですけど、あの状態からここまで変わったというのは、同じようなメンタルヘルスの問題で苦労されている皆さんには大きな励みになると思います。

こういう体験をして来たからこそ、娘は心理セラピストになって心の問題を抱えている人達の回復を助けたいと思っているわけです。回復できると知っているから。

ホントによく頑張っていますよ。


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