皆さんは、「メンズシェッド」(Men’s Shed)という言葉を聞いたことがおありでしょうか?
オーストラリアにお住まいの方なら、聞いたことがある可能性が高いと思います。オーストラリアで生まれた活動だからです。
シェッドというのは、作業小屋のことです。かつてのオーストラリアには、家のことは自分で何とかするDIYの文化がありましたから、シェッドはどの家庭にもありました。ガレージの一部がシェッドを兼ねていた場合も多いです。
犬小屋を作ったり芝刈り機を修理したりということを多くの男性達がやっていましたし、男はそういうことができるのがあたりまえみたいな文化がありました。
そうした文化は変わって来ています。自分で作ったり修理したりする知識も技術もない人が増えました。シェッドがある家も少なくなっているはずです。
「メンズシェッド」(Men’s Shed)というのは「男達の作業小屋」という意味です。高齢男性の健康と福祉を改善する方法として、男性達に社会的交流のための場所と機会を提供する目的で1980年代にオーストラリアで始まった非営利の活動です。
オーストラリアン・メンズシェッド・アソシエーションという全国規模の組織があります。
高齢男性と書きましたけど、年齢に制限があるわけではなく若い人でも参加できるんですよ。でも、「メンズシェッド」にやって来るのは高齢男性が多いです。
退職して社会的なつながりを失ったり、家庭で過ごす時間が増えて家族以外の人達と交流する機会が減ったりした男性達の、孤立や孤独を解消するというのが目的で始まったからです。
実際にどんなことをやっているのかというと、それは「メンズシェッド」ごとに異なるそうですが、木材や金属を使って何かを作ったり修理をしている場合が多いようです。「メンズシェッド」には、そうした活動に必要な機械や道具がそろっています。
地域の子供達と一緒に野鳥の巣箱作ったり、公園に寄付するベンチを作ったりしている場合もありますし、イベントでの販売を目的に木製玩具を作っている場合もあります。
「メンズシェッド」に定期的に集まって、手を動かして一緒に何かを作ったりすることでメンバーの間には友情が生まれ、「メンズシェッド」で仕事をしたという充実感を感じることができ、活動を通じてコミュニティーとの絆ができて感謝の言葉をかけられたりすれば生きがいに通じるわけです。
重要なことは、「メンズシェッド」が、そこにやって来る男性達にとって安心できる快適な場所であること。コーヒーやお茶を飲みながら誰かとおしゃべりができること、それが大事なんだそうです。
男性というのは、自分の感情について話すことに消極的です。「男は自分の個人的な悩みなどを他人に話すもんじゃあない」という文化の中で育っているからです。
他人に話さないということは困っていても助けを求めないということですし、退職後の男性達は女性に比べてより孤立や孤独、憂鬱に苦しむことが多いのだそうですよ。
「メンズシェッド」は、その問題に取り組もうということで始まった活動なのです。
どうしてこんなことを今日書いているかと言いますとね、私達が引っ越して来た家のお隣りに住む高齢カップルのお一人のビルさんが、「メンズシェッド」のメンバーなんだそうです。
ここから一番近い「メンズシェッド」は、リングウッド(Ringwood)という街にあるんですが、リングウッドは私達家族が長年住んでいた街で、そこの「メンズシェッド」はうちの夫がよく知っている方が始めたのですよ。
ビルさんは、うちの夫がツールショップに勤めていて道具や機械に詳しいことや、木工の知識や技術があることを知って、その「メンズシェッド」に一緒に行こうと誘ってくださったんです。
リングウッドの「メンズシェッド」の主な活動は、木材と金属を使ったもの作りだそうです。金属旋盤や溶接機もあるそうなので、うちの夫は以前からやりたかった溶接を習うことが出来るかもしれませんよ。
もちろん、夫の機械やツールに関する知識を活動に役立てることも出来るでしょうしね。ということで、誘ってもらった先週から明日の水曜日が来るのを大変楽しみにしているのです。
夫がお隣りのビルさんと一緒に、毎週「メンズシェッド」に行くようになったら、それはとても良いことだと私は思っています。
夫の目がさらに見えなくなって文字が読めなくなったら仕事を辞めなくてはいけませんが、そうなったら夫はどうなるんだろうかと、私は心配していたんです。
腎臓摘出手術の後の6週間仕事を休むことも簡単ではなかったのに、仕事が出来なくなって毎日家にいるようになったら、うつ病になるんじゃあないかとも思っていたんですよ。
「メンズシェッド」という自分が属せるグループができて、そこでの活動を楽しむことができれば、暮らしに張り合いが出るでしょう。テレビの前に座っているよりよっぽどいいですよ。
たとえ、目が見えなくなって機械を使えなくなっても、そこに行けば仲間がいるという場所があれば、行って話をするだけでも元気が出るでしょう?
うちの夫なら、機械を使えなくなっても、頭と口を使って出来ることがいろいろあるだろうとも思いますし。
いやあ、なんだか良い予感がしています。
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