2023年5月6日

「躁状態」と「うつ状態」

うちの夫は双極性障害2型なんですけど、ここ数年はそういう問題があることを忘れるほど安定しています。

時々気分が落ち込んでいることがありますが、かつてのように仕事に行く気力も失うほどではありません。

前回ひどい「うつ状態」になった時には、仕事を辞めてしまって、毎日寝て過ごし、起きている時はテレビを観ているだけという暮らしが続きました。

そうなると経済的にも大変ですし、家族も気持ちが沈むんですよ。うちの娘は同じ頃に大変具合が悪くなりましたしね。

私はもちろんそんな夫を見るのは心配なんですけど、「うつ状態」の時よりも「躁状態」の時の方が心配は大きかったです。

「躁状態」の時のうちの夫は、ものすごく活動的になります。自信に満ちあふれて、電話をかけまくったり、すごいアイデアを思いついてプロジェクトに取り組み始めたりします。

夜中にも起きてそのプロジェクトに取り組んだりもしていましたが、生き生きとしてむしろ好ましい感じに見えたんですよ。

ところが何度か「躁状態」を経験するうちに、そういう生き生きとした感じになると「怒りやすくなる」というのと「へっちゃらで大金を使う」という傾向があることが分かりました。

怒りやすくなるせいで、勤めていた会社の上司とトラブルを起こしてクビになったことが2回もあります。

へっちゃらで大金を使うというのは、それはもうね、本当に信じられないほど簡単に高額な買い物をするんですよ。「よしこれが必要だ!」と思ったら即買いです。

「なんでこんなものを?」と思うようなものを買って来たりもしますし、「たくさん買ったほうが安くつく」とか言って5〜6個あれば足りるものを20個セットとか50個セットとかで買ってきたりもします。

ある時は、親しい方がトレッドミル(屋内でランニングを行うための器具)を処分したいと言うのを聞いて、この人にはお世話になっているから助けてあげようと思ったそうで、2000ドルも出して買って来たことがありますよ。

住んでいた家には、そんな器具を置いておく場所もなかったので邪魔になって困りました。結局そのトレッドミルは、バスルームの修理に来てくれた人に200ドルで売ったのでした。

私達家族は、いつでも経済的にゆとりがない暮らしでしたけど、使わなくてもいいことにお金を使い過ぎていたせいだとも言えるんです。

最初の頃は「夫はこういう性格なんだ」くらいに考えていましたし、夫の話を真に受けて一緒にプロジェクトに取り組んだり、安心して大金を使ったこともありましたけど。

「うつ状態」になった時に、心理学者だった夫の親しい友人から双極性障害ではないかと言われたことがきっかけで診察を受け、双極性障害だと分かったのですけどね。薬を飲むようになってからは安定しています。

今では極端な「躁状態」も「うつ状態」も無いんですが、「ちょっと元気過ぎる時期」と「元気がなくなって寝てばかりになる時期」いう波があります。

私が心配なのは、やはり「元気過ぎる時期」です。そういう時期にはお金を浪費する傾向があるからです。

夫は自分が稼いだお金は自分で管理していますからね、すべて自由に使えるわけですよ。本当のことを言えば、夫が高額な買い物をするのを私は止められないんですけど、何も言わないでいるともっと使いますから、指摘して注意を促そうとするわけなんです。

ただでもそういう時期には怒りやすくなっていますので、お金を使ったことを批判したりすると不機嫌になって夫婦関係は険悪になるんですけど、何とかやっています。


これをお読みの皆さんの中にも、家族やパートナーが双極性障害だという方がいらっしゃるでしょう。「躁状態」が軽い2型ではなく、激しい「躁状態」を伴う1型の方はさぞ苦労されていることと思います。

かつては躁うつ病と呼ばれていたこの病気ですが、日本では歌人の斎藤茂吉の息子である作家の北杜夫さんが自身の躁うつ病のことを多くのエッセイに書かれて、この病気を有名にしました。

世界的には、非常に多くの作家やアーティストや俳優などクリエイティブな仕事をする人達に、双極性障害の人が多いことが知られていますね。躁状態の時のパワーが創作や活動のエネルギーになるのでしょう。

北杜夫さんが今の時代に生きていらっしゃったら、もっと普通の暮らしをされていたはずです。この病気の研究が進み、薬でコントロールできるようになっているからです。

うちの夫も薬のおかげで普通の生活が送れていますけど、波があるので一緒に暮らす者は苦労しますよ。でも今は病気のことが分かっていますから、それなりの対応ができるわけです。

苦労はしますけどね、お互い様だとも思っているんです。私自身がうつ状態で夫に負担をかけた時期もあるんですよ。一時期、電話に出られないとか、外出できないとか、晩ご飯が作れないとか、何もやる気が出なくて寝込んでいた時期があるんです。

30年も一緒に暮らしている家族ですから、お互いにサポートし合うしか無いと思っていますけど。

皆さんのご家族に最近人が変わったようになった方がいらっしゃったら、脳が病気になっているのかもしれませんよ。

お困りの場合は、受診されることをオススメします


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2 件のコメント:



  1. ちょうど、双極性障害Ⅱ型治療中の娘が昨日から「元気がない期」に入った感じでした。
    ヒロコさんが書かれている言葉通りだなと思いました。
    病気が分からなかった頃は、本人も家族も戸惑い不安の中、まさに五里霧中の日々でしたが、良い医師と薬と出会った今は、調子が悪い時も「それなりの対応ができる」ようになりました。
    病気を知っている、対策を知っているのと知らないのとは、全然違いますね。

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    1. 良い医者と出会えたことは幸いでしたね。私は日本に短期間住んでいた時期に大変具合が悪くなったんですけど、住んでいた街に相談ができるような医者はいませんでした。岡山市内まで行けばいたんでしょうけど、家から出るのが一苦労なのにそんな遠くまで行けないんですよ。医療事情というのがメルボルンに帰って来た理由の一つでもあります。

      今はこうした診察をオンラインで行っている医者もいますし、心理カウンセリンもオンラインで受けられたりします。苦労されている方は、まずは医者の診察を受けることをオススメしますね。その医者では対応が難しいということなら、他の医者を紹介してくれるでしょうし。

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