2022年9月20日

うちの夫は有名らしい

昨日、うちの息子は新しいメガネを作ってもらいに近くのショッピングセンター内にあるOPSMというメガネ屋さんに行きました。

このメガネ屋さんの店舗の奥に眼科医の診察室がいくつかあって、そこに行くたびにテクノロジーの進歩を感じるという話を先月書いたばかりです。だって行く度に新しい機械があるんですもの。目の検査と言っても、最近は本当にいろいろなことができるんですね。

私は老眼鏡が必要になった40歳過ぎから、目の検査はずっとここのOPSMに行っています。うちの夫も息子も同じOPSMに行っています。

うちの息子は幼い頃からメガネが必要でした。普通の健康な人の眼球がテニスボールの形とすれば、うちの息子の眼球はラグビーボールと言われたのは今でもよく覚えていますけど。

問題は乱視なんですが、ものが二重三重に見えるのがひどくなり、夜の車の運転が難しいと言い続けてもう数年になるんですよ。

最近結構な収入があって貯金ができたようですし、長時間座っていることもできるようになりましたから、やっと新しいメガネを作ってもらうことにしたようです。

前回の検査から6年も経っていたそうです。

さて、検査をしてくれた眼科医は、息子の名前の姓「リストン」というのを見て「え?」と思ったそうです。

「リストンさんって、もしかしてお父さんはスティーブ?」
「はい、そうですけど」
「もしかして黄斑変性の?」
「はい、そうですけど」

その眼科医の話によると、うちの夫はそのメガネ屋では知らない人がいないほど有名なんだそうですよ。

「目の奥がひどいことになっているお気の毒な人」ということなんですけど、先月私が検査に行った時にも、名前ですぐに私の夫が「その人」だと分かったようでした。

うちの夫は遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」という病気ですが、これが非常に珍しい病気なので、この病気だと分かった時にはメルボルン大学の研究者から協力を頼まれたくらいでしてね。

夫の目の進行状態を撮影した何年分かの写真は、医学生が勉強する眼科学の教科書にも載るようなレベルだそうですよ。

下の写真は「先天性黄斑変性症の進行」という記事に載せた写真ですが、今年の5月の終わりに撮ったものです。


放射線状の細い血管が集まっている大きな黒い丸は、視神経が集まって束になっている部分です。ここには光を感じる細胞が無いので「盲点」とも呼ばれます。

その横に薄っすらと少し小さめの丸が左側の写真では見えていますが、それが黄斑です。視野の中心となる部分です。黄斑の周囲の黒い斑点は死んだ細胞です。

夫の場合は、こうして細胞が徐々に死んでしまうのです。死んでいくのを遅らせることも死んだ細胞を生き返らせることもできません。治療法は無いのです。

できることは、見えなくなる時に備えること。

現在は細胞がまだ死んでいない部分を駆使して見たり読んだりしているわけです。

私も先月検査に行った時に同様の写真を撮ってもらいましたけど、私の目の奥はつるつるピカピカで、視神経が集まって束になっている丸が見えただけでした。

それを見て、いかに夫の目が異常であるかが分かったわけですが、夫の目は細胞が死んで真っ黒になった部分の周囲には黒ずんで死にかけの部分がたくさんあります。

めったに見ることのない状態だそうです。

このメガネ屋さんでは、眼科医の皆さんをはじめ、スタッフの皆さんも、教科書では読んで知っていた「スターガルト病」の目を実際に見て、本当にびっくりするやら同情するやらで、うちの夫の名前を知らない人はいないということなのでございます。


ところで、5月下旬に撮った上の写真ですけどね、3ヶ月半が経った今、夫の目の見え方はかなり悪くなっていますから、死んだ細胞の点々はもっと増えているんでしょう。

来年の5月にはまた検査を受けますけど、受けたところで治療法はないので一年でどのくらい進行したかを調べるだけですが、また写真を撮ってもらうことになると思います。

先日は色覚異常も始まったことが分かりましたしね、ブルーベリーのアイスクリームがチョコレートアイスクリームに見えたらしいのですけど、これからどんどん進行して行きますよ。

私の一番の心配は、まだ視野の中心が黒く欠損していない右目が、いつ見えなくなるかです。

話している相手の目を見ることができないということは、もう右目も始まっているのだと思いますけど。

右目の視野の中心も欠損すると文字を読むことが困難になりますから、車の運転ができなくなったのに続く大きな節目になるでしょう。

「スターガルト病」は遺伝性ですから、うちの息子や娘にもこの病気が遺伝している可能性があります。息子は目が悪いので心配ですが、昨日の検査では異常は見つからなかったそうです。

娘の目はよく見えるので検査を受けたことがありません。わざわざ検査を受けてこの病気が見つかったとしても、できることは見えなくなる時に備えることだけです。

二人とも遺伝していないことを祈りたいです。


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