バスルームの冷たいタイル床の上に倒れたまま数十分が経過して、すっかり身体が冷え切っていた私ですが、意識はずっとあって、絶え間なく襲ってくる吐き気と闘っていました。
目を開けると何もかもが超高速回転して見えるので目を開けるていることができず、起き上がることもできず、毛布をかけてもらっていましたが、ずっと冷たいタイル床に直に寝転んでいたので大変寒かったです。
やっと救急隊員がやって来た時には、本当に安堵しました。ところが、同時に気になったのが、
隊員の大声!
リーダー格の隊員は、お酒でも飲んでいるのかというくらいの大声で話し、狭いバスルームに入って来てからもその大声で話し続けるので、頭に響いて私は苦しかったのですよ。
「あなたは声が大きすぎる…」
「私は自分の仕事をしているだけです」
「もう少し静かに話して…」
「バスルームにいるんだから大きく聞こえるのはあたりまえです」
何だその態度!
話し方にも苦しむ患者への思いやりが感じられない!
大声を遮ろうと耳を覆っていた私の手を払い除けて体温を測ったり、することが乱暴過ぎ!
目まいを軽減する注射を腕に打つのにも、あまりの痛さに呻く私に「この注射はゆっくり打たないといけませんから仕方がないですよ」と、言うことがいちいち冷たい!
目のチェックをすると言って私の頭を持ち上げるのもね、
もう少し優しくやれるだろうが!
「おお、すごい眼振!」「はいはい、これはもう典型的な眼球の横揺れで、すぐ入院しなくちゃあダメです!」
こういうことをね、ずっと大声で言っているんですよ。
結局この隊員の顔を見ることはできませんでした。目を開けることが出きなかったのもありますが、顔を見てやろうと思って根性で目を開けても、焦点が合わないので認識できなかったんです。
とにかく、そのままの状態では担架に乗せることもできませんでしたから、注射の効き目が出て少し目まいと吐き気が落ち着くのを待ちました。
ところが、
この隊員がうちの夫がツールショップのユニフォームを着ているのに気づきまして、なんとツールの話を始めたんです。なんでも特別な道具を探しているらしくて。ツールに関することで相談されたら親身になって相談に応じるのがうちの夫じゃないですか?
そういう道具ならドコソコの街にあるナントカという店が最も良いとか、延々とツール話で盛り上がる男達。
こらあ!私はここに倒れて苦しんでいるんだよ!
あの隊員の名前が分かったら、レビューで低評価してやるんだけどなあ。
床に倒れたままだった時には、もう吐くものも何も残っていないですし吐き気は落ち着いていたのですけど、救急車まで車椅子にストラップで縛られて連れて行かれまして、その動きが吐き気を引き起こしましてね、何も出てこないんですけど空嘔(からえづき)をし続けるという非常に苦しい状況でボックスヒル病院に運ばれました。
我が家からボックスヒル病院までは、15分もあれば行けるはずなのに結構時間がかかりました。救急車の振動や動きで吐き気が悪化して、道中悶え苦しみました。
そしていつものように、病院に着いてもすぐには診てもらえません。
オーストラリアの公立病院は、数が少ない上にスタッフも足りていないので、いつでも忙しくて待たされるんです。
私は救急車から降ろされてから、廊下で相当な時間待たされました。その間、目はずっと閉じたまま。目を閉じていても頭はクルクル回転していますが、つらいのは目まいよりも吐き気の方でした。
やっと救急治療室に運ばれて、その大声の救急隊員とおさらばです。
診察した医師から後で聞いた話では、その時の私の眼振は本当に相当ひどかったそうです。でも医者は、あの大声救急隊員のように「うわあこれはひどい!すごい眼振だあ!」なんて叫びませんでしたよ。
「ヴァーティゴ(Vertigo)」と呼ばれる回転性の目まいの原因はいくつかあります。医者は耳石が原因となっている可能性を念頭にいくつかの治療を試みました。
頭を特定の順番で特定の方向に傾けることで、三半規管に入り込んだ耳石を外へ出す治療を何度か行いましたが、効果はありませんでした。
救急隊員が打った注射も効果がなかったので、別の薬の服用しました。
しばらくしてから救急治療室から短期滞在患者用の部屋に移されました。入院することになると分かっていましたから、うちの夫が着替えをかばんに詰めて持って来てくれたのですが、夫は車の運転ができませんから、息子が運転するしかありません。
うちの息子はもう相当長い間車の運転をしていませんし、最近は何事にも不安が強くて外出も運転も避けているんですけど、それはお尻が痛いからと言い訳もしますけど、今回はもうそんなこと言ってられませんからね。
暗い夜の道を運転して、行ったこともないボックスヒル病院まで、助手席にうちの夫を乗せて運転してくれたのです。二人とも病院内に入ることはできませんでした。新型コロナのせいで患者以外の家族は病院の中には入れません。
短期滞在患者用の部屋のカーテンの仕切りの中で一夜が開け、朝が来ました。
朝になってもまだ目に見えるものは激しく高速回転し続けていて、吐き気が続き、服用した薬も吐き出す有様でした。
再び頭や身体の位置を動かして耳石を外へ出す治療を行いましたが、やはり何の効果もありませんでした。
原因を調べるためにCTスキャンをすることになりました。ところが、私はいろいろアレルギーがありまして、CTスキャン直前の問診の際に、以前頭痛がひどくてCTスキャン検査を受けようとした時に造影剤を注射し始めたら痒くなって検査を中止したことがあると言ったら、検査は即中止となってしまい、再びベッドに戻されました。
行ったり帰ったり、動く度に吐き気が悪化するので大変でした。
もちろん何も食べることはできず、水もほとんど飲めない状態が続いていました。飲んだ薬を吐き出すので、別の吐き気止めの薬も飲みました。
心配しているであろう家族に連絡を取らなくてはいけないとは思っていたんですけど、目が回って苦しくて動けないので、バッグの中で音を出している携帯電話を取り出すこともできないのでした。
2日目の夕方近くになってやっとMRIをしました。
その後、病棟の脳神経科の階に移されました。部屋は個室で、ベッドのすぐ近くにバスルームがありましたので、看護師の手を借りておトイレに行けるようになりました。
スキャンの結果は翌朝医師から伝えられることになりました。
吐き気がおさまり、目まいも少し軽減したので、家族に連絡を取るために看護師に頼んでバッグに入っているはずの携帯電話を探してもらいました。
ところが、携帯電話はなかなか見つからず、代わりにとんでもないものが見つかったのです。
(つづく)
伏せっていた数日の間に辺りは急に春めいて来ました。
木々には花が咲き、新芽も出始めています。
しかし、あの向こうに見えるどんぐりの木(オークの木)ですけど、もう春が来てしまったというのにあんな有様。
あの木はね、通常なら秋にちゃんと紅葉して、冬には葉っぱが落ちるんです。どんぐりの木なんですからね。
ところが、今年はまだ紅葉が進んでいない。
上の辺りが少し赤くなりかけているだけで、緑のまま。落葉もしていないのに春が来てしまって、これからどうするんですか?
春の到来を告げるはずのワトルの木は、現在至る所で満開ですが、上の写真右側に写っている我が家のワトルの木は、今年もボケて夏の終わりから花を咲かせ始め、その後ずっと少しずつ咲かせ続けて来たせいで(今でも少し咲いていますけど)もう蕾が残っていません。
うちの近所にある街路樹なんてね、紅葉もできていないうちに花を咲かせ始めて、おまけに新芽も出し始めて、緑の葉っぱと紅葉した葉っぱと枯れた葉っぱと花と新葉がごっちゃ混ぜという「四季混在状態」になってしまい、非常に見苦しい状態でしたよ。
気候の変化で草木がボケてしまっているんです。
現在8月。メルボルンは暦の上ではまだ冬ですが、外に出ると花の香りでいっぱいです。
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