入院2日目の夕方、いくら何でも家族に連絡を取らなければいけないと思い、かばんに入っているはずの携帯電話を看護師の方に頼んで探してもらいました。
朝からかばんの中で iPhone が音を立てていたので、かばんに入っているのは確実でした。ところが、そのバッグは以前うちの夫が仕事で旅行する際に使っていた小さめのスーツケースでして、やたらにたくさんのポケットが付いているので携帯電話はなかなか見つからなかったのです。
「携帯電話は無いですねえ」
「音がしていたので絶対に入っているはずなんです」
看護師さんは手を突っ込んで探していましたが、なかなか見つからないので、中に入っているものを取り出しながら探し始めました。
そうしたら、
あっ!
「ワインが入ってる!赤ワインが1本入っていますよ、ヒロコさん!旦那さん、どうしてワインを入れたんですか!」
何だそれ!
後から分かったことですが、先日うちの夫が車の運転をやめた後、当時勤めていた店舗が家から遠かったために伯母さんの家に数日泊めてもらったのですけど、その時そのかばんを使ったんですよ。そして、そのワインはその時に伯母さんから頂いたものだったのです。
使ったら使ったまま、片付けないで放ったらかしていたかばんに大急ぎで私の着替えを詰めたので、頂いたワインがそのまま入っていたということでした。
かばんにワインが入っていたという話は、看護師の皆さんに大受けでしたけど。
さて…
非常に騒々しかったカーテンだけで隔たれていた短期滞在患者用の部屋から病棟の個室に移って静かになるかと思ったら、この脳神経科の病棟は大声を出す人や大きな音でテレビを見続ける人や大いびきをかく人や重度の病気で咳き込む人や、いろいろな患者さんがおられてですね、うるさくて全くゆっくり休むことはできなかったのです。
これはもう何としてでも早く家に帰りたいと思い始めました。
そして3日目の朝。
目まいはさらに軽減していて、ベッドに横になっている限り、右側を見た時だけは見えるものが回転せずに普通に見えることに気づきました。
MRIの結果を見て医者が3人やって来ました。一人は前日から治療をしてくださっていた女性医師で、もう2人男性医師もやって来ました。
私の目まいの原因は、右側の前庭神経炎、すなわち平衡感覚のコントロールをしている内耳と脳をつなぐ前庭神経の炎症だそうです。何でそんな所に炎症が起きたのか分かりませんが、今思えば先月右耳の奥に違和感を感じたことがありました。チクチクするような感じがありました。
前庭神経炎の特徴として、
- 激しいめまいは数日続くけど日に日に改善する
- 大きな目まいの発作は一度きりで繰り返さない
- 目まいが治った後もふらつきが残る
- 難聴や耳鳴りなど聴覚の問題は伴わない
というのがあるそうです。
激しい目まいは繰り返さないというのは安心ですが、目まいが治った後もふらつきが残るというのが心配です。現在じっとしていると目まいはほとんど無いのですが、ふらついて普通に歩くことはできない状態です。
治療は薬物療法とリハビリだそうです。
炎症を抑えるためのステロイド薬とステロイド薬から胃腸を保護する薬、それから目まいと吐き気を抑える「抗めまい薬」の3種類の薬を飲んでいます。
前庭神経炎では、ふらつきが数年にわたって続くことも少なくないそうで、そのためにふらつきを改善するリハビリを行います。この運動も指導してもらいました。
家に帰りたいという私の希望を聞いて、3日目の午後、判断のために男性医師の一人が私の歩行をチェックしにやって来ました。
その頃には、私はもうおトイレくらいは結構自信を持って一人で行けるようになっていました。
「じゃあヒロコさん、廊下を歩いてみてください」
「え?廊下を?」
「どうかしましたか?」
「ええその…廊下はちょっと…おトイレなら行けますよ」
「どうして廊下はダメなんですか?」
「何かにつかまらないとちょっとアレなので…」
それでも、なんとかこの日のうちに家に帰りたい私は頑張りましたが、やはりふらつきがひどいので何かにつかまっていないとバランスが取れません。
そこに通りかかった一人の看護師。前日におトイレに行くのを手伝ってくれた人でした。
「何やっているんですか?」
「ヒロコさんが家に帰っても大丈夫かどうかのアセスメント」
「こんなにフラフラなのに無理でしょう!」
「いや、ものにつかまれば動けるんですワタシ」
「つかまるものがなかったらどうするんです!転んで怪我をすると大変ですよ!」
「そうですよねえ、こんなにフラフラじゃあちょっとまだ無理ですよねえ」
「せめてもう一晩入院してください!」
がっくりです…
入院3日目も夕方が近づき、髪の毛はベトベト、身体も臭くなってきていましたので、看護師さんに助けてもらいながら椅子に座った状態でシャワーをしました。ハンドソープを付けて頭を洗いました。
そうしたら、このシャワーで無理をしたせいか吐き気がぶり返し、やっと食欲が出てきて2日ぶりに何か食べられると思っていたのに、再び何も食べられなかったのでした。
入院以来ずっとほぼ絶食状態が続いていました。
この日の夜は、いつも以上に病棟がうるさくて、大声で叫ぶ人や騒ぐ人がいて、夜中の院内放送も度々あってほとんど眠れず、私は4日目には絶対に家に帰ると決意したのでした。
(つづく)
現在は食欲が戻り、一度に食べられる量も増えてきていますが、水曜日に具合が悪くなってお腹にあったものをすっかり吐き出した後、2日以上ほとんど飲まず食わずだったでしょ?
その後少しずつ食べられるようになったと言っても、私が食べたいものは果物と甘いものとスープというわけでして、おまけに一度にお腹に入れられる量がしれているという状況では、身体に劇的な変化が起きますよ。
何が驚いたかって、もうね貴方、脂肪が落ちたと言うよりも筋肉がごっそり落ちたことです。
特に自分でも驚いちゃったのが脚でして、大腿部からお尻のあたりに触れたみたら、
骨しか無い!
というのは大げさですけど、実際そんな感じだったんです。
歳を取るとアレですか、病気になると脚の筋肉から落ちていくとか?
体重が減って嬉しくなかったのは初めてでした。
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