1月26日は、1788年に英国からの第一船団(First Fleet)がポート・ジャクソン湾に到着した日です。この日はオーストラリアという国が始まった日であるとともに、原住民への迫害が始まった日でもあるので、この日をオーストラリア・デーとすることに反対する人達もいます。
私の関心は、この日に合わせて発表される「オーストラリアン・オブ・ザ・イヤー」という国民栄誉賞の受賞者です。この賞は、すべてのオーストラリア国民の模範となる「すばらしい功績をあげた優秀なオーストラリア人」を表彰するものです。
昨年の受賞者は、息子のルーク君(11歳)を町のクリケットグラウンドで練習を見に来ていた父親に殴り殺された、ルーク君のお母さんロージー・バティさんでした。
事件の直後から、ロージーさんはメディアのカメラの前に立ち、家庭内暴力が起きていても隠され、また被害者が心理的あるいは経済的理由で泣き寝入りしていると、家庭内暴力の被害者の声に耳を傾けてくださいと、社会に対して訴え続けました。ロージーさんの訴えにメディアも家庭内暴力について報道するようになり、国民の意識が大きく変わってきたのです。
ロージー・バティさんのことは改めて書きたいと思います。
さて、今年の受賞者は、元オーストラリア陸軍司令官のデイビッド・モリソン氏でした。ああ、退職した元軍隊のトップね…と考えるのは間違いです。
モリソン氏は、36年間オーストラリア陸軍に勤め昨年退職した方ですが、この方は陸軍におけるある事件をきっかけに非常に有名になりました。2013年のことですが、軍内で複数の男性将兵が女性将兵の性行為動画をこっそり撮影し電子メールで配布していたことが明るみに出て、軍内に根強く存在する女性軽視やハラスメントを許容する文化が問題視されました。
その直後に、陸軍司令官モリソン中将が「女性を対等の人間として尊敬できない者は軍を去れ」と厳しく命ずるメッセージが発表され、これによって多くの国民がこのモリソン中将の存在を知ることになったのです。そのメッセージがこれです。
受賞したモリソン氏は、「多くのオーストラリア国民が、自らの能力を発揮する機会を奪われてきた。それは性別、信仰、出身民族、身体頑健であるかどうか、あるいは性的傾向などを原因としている。しかし、国としてもそれらの人達に能力を発揮する機会を与えるべきだ。彼らが能力を発揮できた時、我々もその恩恵を受けることになるし、真の多様性とはそういうことだ」と語ったそうです。さらに、今年は、家庭内暴力、男女所得格差、共和制運動という3つの分野で全力を尽くしていくつもりだ」とも語っておられます。
このモリソン氏の受賞を、私は強く支持したいと思います。
また上のモリソン中将のスピーチを執筆した陸軍中佐のケイト・マクレガー氏は、今年最終選考に残った一人でした。ぜひ皆さんに知っていただきたい方です。マクレガー中佐はトランスジェンダーでご本人自信が偏見と闘って来られました。しかも軍隊の中で。下のインタビューは、私がこれまで視聴したインタビュー番組の中でも特に秀逸なもので、私がこの方に注目するきっかけになったものです。
オーストラリア社会にも根強い人種差別や性差別はありますが、ここ数年で特に目だって変わってきたと感じます。
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