摂食障害に関する研究論文を先月提出したので、後は実際にカウンセリングを行った時間が所定の時間数になれば卒業出来るはずなんだそうです。
昨年は大学内のクリニックで研修を行いました。今年の1月から6月までは病院のリハビリテーション科で研修を行い、7月からは司法精神医療施設で研修をしています。
この司法精神医療施設という所について度々話題に取り上げて来たわけなんですが、「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」(Forensic Disability Services)と呼ばれるものの一部なんです。
施設にも種類がいろいろあるんですが、簡単に言うと知能障害や精神障害のある犯罪者の社会復帰のために治療(カウンセリングなど)とサポートを提供しているんです。
研修で何をしているかと言うと、実際にクライアント(患者)を相手にカウンセリングを行っているのですよ。経験のある心理カウンセラーである教員から指導を受けながら。
司法精神医療施設では、犯罪者の精神鑑定とかプロファイリングの仕事もあるのですけど、犯罪者と一対一でカウンセリングもしているのです。
うちの娘は大学院卒業後の進路としてここを考えていたそうなんですが、今はもうそんなことは全く考えていません。早く所定の時間数に達して研修を終えることを待ち望んでいると言ってもいいです。
それは司法精神医療施設の現実を知ったからですよ。
実際に就職してからではなくて、研修中にそれを知ったことは良かったと思います。「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」の方からは、大学院卒業後に引き続き働いて欲しいと言われたそうですが、本人にはもうその気はありません。
先月末に「スタッフが襲われたそうです」という記事に書きましたが、あれが大きな転機になりました。
娘が働いている施設は複数あって、一つは知的障害のある性犯罪者を収容している医療刑務所みたいなところです。スタッフが襲われたのはそこです。
先週もまたそこで事件が起きて、警察が出動したそうですよ。
別の施設では、殺人犯やワイフビーター(Wife-beater)つまり妻に暴力を振るった人などを相手にカウンセリングをしていますが、先週はその施設が入っている建物内のドアのガラスが割られたそうです。
暴れてドアのガラスを割ったのは女性の犯罪者でした。娘がカウンセリングをしている殺人犯というのも女性です。女だからと油断は出来ないのでございますよ。
クライアントとなる犯罪者のほとんどは男性です。特に医療刑務所みたいな施設に収容されている性犯罪者は、全員が男性です。そういう施設で若い女性の心理カウンセラーが働くことの危険は、火を見るよりも明らかじゃあないですか。
「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」には多額の税金が使われているんですが、それでも現状のままでは十分なことは出来ないと娘は言います。組織の運営にも問題があると感じているそうです。
実際に犯罪者と接して話を聞いて来た娘は、彼等は被害者でもあるんだと言います。親や家族や社会の誰かから虐待やいじめを受けて育ったんだと。そして、知的障害のために様々なことを正しく判断することが出来ないし、他の犯罪者に搾取されたり被害を受けたりもしているんだと。
何とか彼等の社会復帰を支援したいけど、この研修が始まってから今まで、自分が誰かの助けになった実感も無いし、何も達成出来ていないと落胆しています。
難しい仕事ですよ…
それに加えて、こうした施設で働く危険やストレス、先日スタッフが襲われるのを目撃したことのトラウマなど、いろいろ理由はあるんでしょうけどね。今後の進路として、この仕事は選択肢から消えたと言うので、私は正直なところホッとしました。
知的障害のある性犯罪者が収容されている施設に関しては、限られた人数の犯罪者に年間数億円という多額の税金を使ってこんなサービスをやっても意味がないと批判する人も多いんですが、治療を受けずに社会に出た場合の再犯率は5人に3人、治療を受けて社会に出た場合は5人に1人だそうですから、意味が無いとは言い切れませんけどね。
何ヶ月も何年もかけて治療をし、もう大丈夫だと判断して社会復帰した小児性愛者が、すぐにまた幼児を襲ったというケースもあったそうです。居場所を24時間GPSで監視していたのにです。
そういう人は、ずっと隔離しておいた方が社会のためだと思ってしまいますよ。あるいは、強制的な科学去勢を導入するとか。犯罪者の人権を重視するあまり市民が被害に遭い続けるというのは納得が行きません。
障害者支援のための政府予算の多くが、一般の障害者支援のためではなく、この「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」すなわち知的障害のある犯罪者の社会復帰支援のために使われているというのも納得いきません。
まあとにかく、あと1ヶ月半、うちの娘が無事にここでの研修を終えてくれることを祈っています。
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