昨日は、うちの夫が腎臓摘出手術を受けたオースティン病院でのセミナーに行くつもりだったのですが行けませんでした。
オースティン病院では、様々なテーマで一般公開セミナーが行われていまして、うちの夫は腎臓移植プログラムに関わった関係で病院からこうしたセミナーへの案内が届きます。
昨日のセミナーは「サイトメガロウイルス」(Cytomegalovirus)の感染症に関するものだったので行きたかったのです。うちの夫の家族に深刻な影響をもたらしたからです。
今日は、この「サイトメガロウイルス」について書こうと思います。
おそらく皆さんの多くはこのウイルスのことをご存知ないでしょう。世界中のいたるところに存在するありふれたウイルスですから、ほとんどの人が成人するまでには感染します。
感染すると体内に抗体が出来ます。初感染の時でも症状はほとんど無いか風邪程度なので、このウイルスに感染したことに気づく人はまずいません。
健康な子供や大人が感染しても全く問題は無いのですよ。
一番問題なのは、妊娠中の女性が初感染した場合に胎児が感染することなんです。妊婦は無症状であっても胎児の脳に様々な障害が生じることがあるからです。
うちの夫の2歳下の妹は、母親が妊娠中に「サイトメガロウイルス」に感染したことが原因で脳に重い障害を持って生まれました。
自力での移動は不可能で、日常生活の単純な作業を行う能力も無いばかりか、ものごとを認識する能力もありませんでした。自分の母親すら認識しませんでした。
意思の疎通は出来ません。見えているのか聞こえているのか感じているのか、それを知ることも困難でした。彼女からは反応が無かったからです。植物状態に近いと言えます。
2歳の時に特別な施設に入って以来、政府からの経済的な支援を受けて施設で世話をしてもらっていますが、家族が会いに行っても反応はありません。何も認識していないからです。
重い障害があっても何か楽しめることが一つでもあれば救いですが、彼女は何もしませんし出来ません。ただ食べ物を食べさせてもらって排泄の世話をしてもらって、全てのことを誰かにつきっきりで世話をしてもらって生きているだけです。
長生きは出来ないと言われていたそうですが、今年54歳になりました。
「サイトメガロウイルス」の母子感染のせいでこれほど重い障害を持って生まれる人は珍しいそうですが、これほど重い障害を持って生まれた人がこんなに長生きしているのも珍しいことだそうです。
このごくありふれたウイルスがこのような悲劇の原因になることは、ほとんど知られていません。私も夫の家族に会うまでは知りませんでした。聞いたことも無かったです。
うちの夫の母親は、ものすごい確率で運が悪かったとも言えるんですけど、妹が重い障害をもって生まれたことは、うちの夫にも大きな影響を及ぼしました。
夫が4〜5歳の頃に幼い妹は施設に入れられて二度と帰って来なかったわけです。定期的に両親とともに妹に会いに行ったそうですが、その施設は精神病院の一部でしたから幼い子供にとっては怖い場所でした。
良い子にしていないと自分もあそこに入れられるという強い恐怖が生まれ、夫のメンタルヘルスの問題の原因になったのですけど、そのことに気づいて治療を受けたのは私達が結婚した後でした。
過去に「サイトメガロウイルス」に感染したことがあって既に抗体を持っている女性が妊娠した場合は、ほぼ心配は無いそうです。問題は、抗体を持っていない女性が妊娠中に初感染した場合です。
「サイトメガロウイルス」に感染しても無症状で無事に生まれる赤ちゃんもいるそうですが、成長するに連れて聴力障害、運動障害、知能障害などを発症する場合があるそうです。
感染を防ぐためのワクチンも治療薬もありませんので、妊娠中にこのウイルスに感染しないことがとても重要なんです。気にし過ぎてもしようがないと言う方もいますけど、妊娠中のウイルス感染予防には真剣に取り組むべきだと私は思います。
将来出産を考えていらっしゃる方や現在妊娠中の方は、「サイトメガロウイルス」について正しい知識を持ってください。
日本では、近年このウイルスに一度も感染したことがない人が増えているそうですしね。医師の指導に従って、感染を防ぐために出来ることをするべきです。
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