2024年5月2日

苦労する靴の紐

靴の紐に苦労しているのは私ではありません。

長年酷使してきた私の手は、常に痛みがあるので編み物を楽しめなくなっていますけど、靴の紐を結ぶのに苦労するようなことはないです。

苦労しているのはうちの夫。理由はもちろん、

紐が見えないから!

何度も話題にしていますが、うちの夫は遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」で徐々に目が見えなくなって来ているんです。

毎朝仕事に行く時に、靴を履くのに時間がかかるんですよ。玄関には椅子が置いてありましてね、その椅子に座って結んである紐を解くのですが、延々と時間がかかるんです。

蝶結びの紐の端を引っ張って紐がほどけずにコブのような固結びになってしまったりすると、もう大変です。紐がどういう状態になっているのかが見えませんからね、手探りで結び目をほどいているようです。

紐をほどくのは私がやってあげてもいいんですけどね、それは夫が自分で出来ることが一つ減るということですから、また少し自尊心を奪われることになるわけですよ。

視力のせいで少しずつ出来ないことが増えて、自立と自由を失って来ているわけですから、少々時間がかかっても靴の紐くらい自分でやらないと気がすまないでしょう。

昨日も延々と紐をほどこうとしているのを見て、私は言いました。

「ねえ、次に買う靴は紐がないタイプにした方がいいんじゃあないの?」
「うん、もちろんそうするよ」
「大人の靴でもマジックテープのがあると思うわよ。紐が結べない人だっているんだから」

うちの夫が勤めるツールショップでは、靴とズボンは黒と決まっているんですが、マジックテープの黒い安全靴を探してみたところ見つけられませんでした。

夫は、マジックテープの靴はイヤなようです。スリップオンの靴にすると言っていますが、スリップオンの靴は足にぴったり合えばいいですけど、そうでないと脱げやすいですからね。

探してみたら、紐で足に合うように調整できて、横についているファスナーで簡単に脱いだり履いたり出来る安全靴がありました。

それ、オススメです!

私がいつも履いている靴がそういう靴なんです。ウォーキングシューズなんですが、ファスナーで簡単に脱いだり履いたり出来ます。紐の調整は買った時に一度しただけですよ。

今履いている靴が履けなくなるまで待たなくても、新しいのを買うと苦労が一つ減ります。


目がさらに見えなくなれば困ることは増えて行くでしょうけど、解決策や代替策はあるわけです。

車の運転が出来なくなっても、歩いて通勤できるこの家に引っ越して来たことで問題は解決しましたしね。バスや電車を利用しやすい場所にあるので、夫は私に送り迎えをしてもらわなくても自分で移動出来ることが増えました。

コンピューターやスマートフォンには、視力障害者のための様々な機能が付いています。さらに見えなくなってからもほとんどのことは出来ます。

夫はもう本が読めないんですが、それを音読したオーディオブックというのを聞くことが出来ますから読書をあきらめることもないですし。

そう言えば、昨日一緒にショッピングスクエアまで歩いて買い物に行った帰り、出口の近くにあったカフェの前を通り過ぎた時に「ここ高齢者割引してるって!」と夫が言いました。

そのカフェの中に「シニア(高齢者)は割引価格」というサインが出ていたんですって。

「よかったなあ!ヒロコはシニアだから割引価格だよ!」
「やったあ!(泣)」

視界の中心がほとんど見えなくなっているので本は読めないし靴の紐は見えないけど、そのカフェのサインは見えたんですね。

夫の網膜は黄斑周辺の細胞が死んで真っ黒なんですが、まだ見える部分を駆使して見たり読んだりしているのですけど、驚かされるほど文字の認識は良く出来るんですよ。

ただし、それは十分な照明なり明るさがある場合に限ります。

歩いて通勤していますが、朝と夕方の通勤時が暗いので道路がよく見えません。普通の人なら街灯だけで十分な明るさですけど、夫には不十分なので懐中電灯で道を照らしながら歩いています。

安全のため、車の運転手や他の歩行者から見つけてもらいやすいようにと光を反射するテープが付いているジャケットを着て行っています。

仕事が続けられるのは、あと1〜2年ではないかと私は思うんですが、普通の暮らしが出来るだけ長く出来るように、いろいろ工夫しながらやって行きます。


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