2024年5月27日

バイリンガルが役に立つ時

この週末は、うちの娘が久しぶりに帰って来ました。

大学院の論文の締め切りが2週間後に迫っているので、我が家で勉強をしたいということでしたが、土曜日は親友のCちゃんとカセドラル山脈(Cathedral Range State Park)という所にハイキングに行き、日曜日の午前中はうちの息子と例のマウント・ロフティー(Mount Lofty)にハイキングに行き、勉強していたのは日曜日の午後だけでしたよ。

論文は1年かけて研究してきた摂食障害に関することだそうです。あと2週間もあれば十分間に合うと言っていました。

それはともかく、娘は病院のリハビリテーション科での研修と論文で忙しいわけですが、レストランでのアルバイトもやっています。大学に入ってから今年で8年目ですが、親からの経済的援助ゼロで全部一人でやって来たんですから大したものなんですよ。

しかも、ハイスクールを卒業した頃はパニック障害で家から出られなくなっていたんですし、大学生活も最初のうちは家を出て大学まで行くということ自体が最大の問題で、不安障害では長年苦労したんですから。

アルバイトをしているのは、メルボルン大学の関係者が利用できる会員制のレストラン・カフェです。イベントが行われることもありますし、会員と一緒なら会員ではない人達も食事を楽しむことが出来ます。

先週はいつも以上にシフトが入っていて忙しかったそうですが、金曜日の夜にレストランからメッセージを送って来ました。有名人が来たとか、嬉しいことがあった時などによくメッセージを送って来るんです。

この日は、レストランに15人の日本人ビジネスマンと日本人研究者のグループが来たんだそうですよ。日本語を喋っているのですぐに分かりますからね、うちの娘は日本語で対応することにしたんだそうです。

メニューの説明やワインの紹介なども全部日本語でしたそうです。

以前の娘には、そんなことは無理でした。それが出来る日本語力が無かったですから。私が話す日本語を理解することは出来ても、めったに日本語を話すことは無かったんです。かなり苦手意識があったようです。

日本語が劇的に上手になったのは、シェアハウスに住むようになってからでした。そのシェアハウスに日本人が何人も住むようになり、彼女達と日本語で会話するようになってからどんどん上手になりました。

金曜日にレストランにやって来た日本人グループは、ウェイトレスに日本語で対応してもらえて大いに安心し、リラックスして食事を楽しんでくれたそうです。

「日本語が通じてよかったなあ」と話している声が聞こえたそうですよ。

この日は大変忙しくて厨房のスタッフもてんてこ舞い。今やベテランウェイトレスの娘は、どんな業務もこなせる「なんでも屋」ですから、デザートの盛り付けなど厨房の仕事も手伝ったそうです。

お客さん達には喜んでもらえて、レストランのマネージャーやシェフには感謝され、自分は達成感を感じることが出来て、相当嬉しかったらしいですよ。

特にバイリンガルであることが仕事で役に立ったことは嬉しかったようです。

娘は、大学院に入る前の2年間は就労経験が必要だったせいもありますが、学費を稼ぐために働いたんですけど、心理クリニックの受付の仕事をしていました。

この時も、バイリンガルであることが役に立ったんですよ。

ある日、クリニックにカウンセリングを受けに来た人が日本人だったので、娘は日本語で話しかけたのです。メンタルヘルスの問題を抱えていたその方は、受付の人に思いがけなく日本語で話しかけられて感激し、泣き出したそうです。

その方は、日本語で話しかけてくれたことを娘に感謝されたそうですよ。少し心が軽くなったに違いないです。

臨床心理士になってからも、日本語が話せるということが役に立つことがあるだろうと思います。


余談ですけど、うちの息子と娘がバイリンガルであることが将来役に立つと私が思っていることが一つあります。それは、私がいつか認知症か何かで英語を忘れたとしても大丈夫だということなんです。

よく聞く話ですよね。認知症になると、母語を忘れることはまれですが、後から獲得した言語は忘れてしまうのです。

私は日本語しか話せなくなり、うちの夫は英語しか話せなくなるでしょう。でも、うちの息子と娘はバイリンガルですからね、両親のどちらともちゃんと意思の疎通が出来るわけです。

これね、オーストラリアのような移民社会では問題になることがあるのです。父母や祖父母の話す言語を学ばずに育つ子供達が大勢いるからです。

英語が母語ではない父母や祖父母が英語を話せる場合は、家庭において英語で会話が出来ているうちは問題無いわけですが、認知症などで英語を忘れた時に意思の疎通が出来なくなるのです。

たとえ家庭内では母語を話して育てても、子供達が学校に行くようになると必ず英語がメインの言語になりますからね、母語を教える努力をしないと話せるようにはなりませんし、特に読み書きは出来るようにはなりません。

うちの息子と娘はハイスクールのVCEで日本語を勉強したので少しは読み書きが出来ますが、それは小学校低中学年レベルです。しかし、重要なのは会話力。

いつか私が英語を忘れても、息子や娘とは意思の疎通が出来るというのは安心です。


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