2024年5月28日

認知症と終末期と尊厳死

うちの夫が勤めるツールショップの同僚Cさんですが、ピアノの先生をされていたお母さんに脳のがんが見つかり、認知症の症状が出ています。

記憶に障害が出て物忘れがひどくなっていらっしゃいますし、家事も出来ないので、現在独身のCさんがお母さんと同居して身の回りの世話をされています。

Cさんのお父さんは認知症で何年も前から介護施設に入っておられましたが、昨年お父さんにも脳のがんが見つかり、認知症は悪化しました。

最近は身体も弱り、介護施設ではベッドから転落したり転倒したりを繰り返すようになっておられたそうなんですが、腎臓が機能しなくなっていることが分かったのが先週のことです。

さらに、下肢のどこかに血栓があることが分かったそうです。下肢が赤黒く腫れて痛みが出たからです。

しかし、血栓がどこにあるのかを調べることが出来ません。腎臓が機能していないからです。腎臓の方は人工透析も出来ないんだそうで、要するに何も治療は出来ない状態なんだそうですよ。

血栓が別の場所にも発生して動脈を詰まらせるか、足の壊死が進んで感染症を引き起こすか、腎臓が機能していないために尿毒症のような状態になるか、いずれかが原因で死ぬのを待っているだけなんですって。

こういう状態の場合、ヴィクトリア州では本人の意志で安楽死を選択することが出来ます。2017年に自発的安楽死が合法化されましたので、本人の意志で安らかに最期の時を迎えることが可能になっています。

しかし、Cさんのお父さんは認知症で判断が出来ませんから、安楽死を選ぶことは出来ません。

介護施設から病院に移されて、現在は病室で死が訪れるのを待っているだけなんだそうです。オピオイド鎮痛薬のおかげで意識がほとんどなく、苦しんではいないそうですけど。数日かもしれませんし、もっと時間がかかるかもしれません。

ひどい人生の終わり方です。

お父さんもお気の毒ですけど、疲れ果てているCさんもお気の毒です。

今日は、他州に住んでいるCさんの兄弟が病院に来られるそうなので、医者が何らかの措置をしてくれるのかもしれません。


ヴィクトリア州の多くの病院では、安楽死を希望する終末期患者の希望をかなえるために医者が安楽死を援助することは、自発的安楽死が合法化される前からすでに行われていました。

つまり、医者の中には違法なことだと承知の上で安楽死の援助をしてくれる人がいたのです。

以前、うちの夫の親しい友人のLさんが大腸がんが多臓器に転移して亡くなった時には、自発的安楽死はまだ合法化されていませんでしたが、本人が希望していた安楽死を援助してくれた医者がいました。

Lさんは、末期がんで食事も不可能になり、チューブにつながれてベッドに横たわる以外何もできない状態になった時に、まだ自分が自分であるうちに自分の人生を終わりたいと考えていました。

待ち受けている激しい痛みと苦しみ、それらを和らげるためにモルヒネを打たれ、意識を失い、自分が自分ではなくなることが分かっていました。 自分という存在がなくなってしまった後に、何日間生き続けるのか。そのような状態を生きていると言えるのか。

だからLさんは、まだ自分が自分であるうちに自分の人生を終わりたいと希望していたんです。そして、希望した通りの終わり方が出来たんですよ。

自分が自分ではなくなった後も、心臓が止まるまで生き続けたいと考える人もいるでしょうけどね、私は尊厳死の方を選びます。

何かあった時にどうして欲しいのか、私は家族に希望を伝えてあります。無駄な延命治療はしないで欲しいことや、高額な費用がかかる葬儀など不要であること、お墓は要らないけど代わりにどうして欲しいのかということも伝えてあります。

まだ若い息子や娘だって、交通事故などいつ何が起きるか分からないんですからね、臓器提供をするのかしないのかということも含めて、こういうことを家族の間で話題にし、それぞれの希望を伝えておくことは大事だと思いますよ。


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