2024年2月16日

郵便局スキャンダルとTVコマーシャル

英国で今年1月1日から4日連続で放送されて記録的な視聴率となり、国内がこの話題で騒然になったというTVドラマ「Mr Bates vs The Post Office」のことは、ニュースで知ってからずっと見たいと思っていました。


英国史上最大の冤罪事件と呼ばれる郵便局スキャンダルをドラマ化した全4話のミニシリーズですが、英国の人々の多くはこの郵便局スキャンダルのことを知らなかったそうです。

私も聞いたことが無かったのですけど、いろいろ調べてみるとひどい話なんですよ。

英国の郵便事業は、この事件が起きた頃にはまだ民営化されていなくて、政府が所有する公社が事業を運営していました。郵便局は、個人経営のショップやカフェなどの事業主が郵便公社からの許可を得て、ショップやカフェの一角で郵便局の仕事を請け負うのが一般的だったそうです。

全国にあるこうした民間受託の郵便局で、1999年から2015年にかけて会計システム上の金額と郵便局窓口の現金との間に不足額が生じるというトラブルが発生したんです。

1999年に導入された富士通の会計ソフト「ホライズン」の欠陥が原因だったのですが、郵便公社も富士通もソフトの欠陥のことは隠匿していたんです。

会計ソフトのトラブルですからね、困った郵便局の皆さんは当然ヘルプラインに電話をしたわけですが、こういう問題が起きているのはあなただけだと言われているんですよ。それはウソなんですけど。

多くの受託郵便局長達が詐欺・窃盗・不正経理などの罪で訴追されました。横領罪で収監された人もいたんです。原因はソフトの欠陥なのに、刑務所に入れられたんですよ。ストレスから自殺した人もいらっしゃるんです。

訴追を免れるために不足額を埋め合わせるために借金をしたり家を売る羽目になったり、被害者は何百人もいらっしゃいます。

元受託郵便局長のアラン・ベイツさんも被害者のお一人で、経営していた郵便局を失い、家も財産も失った方なんですが、このベイツさんという方が中心となって「Justice for Subpostmasters Alliance」(受託郵便局長組合に正義を)という団体を組織して裁判を起こしました。

一連の刑事訴追と有罪判決は冤罪だったとの判決が下されたのは2019年のことです。20年もかかっているんです。しかも、現在もまだ被害者が十分に救済されていないんだそうですよ。

このドラマが、やっとオーストラリアでも今週の水曜日からチャンネル7で放送されると知り、私は楽しみにしていました。

最近はもうまったくテレビを見なくなっている私ですが、水曜日の夜は久しぶりにテレビの前に座りました。放送開始時刻8時55分は、普段なら就寝準備時刻なんですけど、このドラマは見たかったので遅くなるのを覚悟していました。

いよいよ始まりました。ベイツさんの郵便局に郵便公社の調査員達が乗り込んで来るシーンから始まりました。事情を知った上で見ているわけですが、非常に緊迫感があり、すぐにドラマに引き込まれました。

すると突然、

コマーシャル!

そうか!テレビにはコマーシャルがあるんだった!

それまでの緊張感が突然途切れ、ビールやフライドチキンのふざけたコマーシャルが続き、ドラマが台無しです。

コマーシャルが5つも6つも続き、「早く終わって!」と画面に向かって憤る私。ところが、コマーシャルは終わらないんです。まだまだ延々と続くんです。ウンザリを通り越した頃にやっとドラマが再開しました。

会計ソフトの欠陥で不足額が生じて苦しむ人のドラマが続きます。見ていて胸が締め付けられます。

すると突然、

コマーシャル!

え?また?

今度はいくつコマーシャルを流すか数えました。13個でした。多過ぎる!

この夜はシリーズ前半の2話が放送されたんですけど、翌日も仕事だったうちの夫は途中であきらめて寝てしまいました。私は頑張って最後まで見ましたが、見終わったらチャンネル7のストリーミングサイトで全話が視聴できると言いましたので、残りの2話は翌日にパソコンで見ました。

テレビの場合は12〜13個のコマーシャルが頻繁に入っていましたが、ストリーミングの場合は平均5個のコマーシャルでしたから、ストレスは少なかったです。

人々がテレビでドラマや映画を見たくない理由はこれですよね。コマーシャルのせいで台無しになるんです。

私はもうテレビでドラマや映画は見ませんよ。


ところで、TVドラマ「Mr Bates vs The Post Office」ですが、機会があればご覧になることをオススメしますよ。ドラマで描かれていることが実話であるというのがちょっと信じがたいし、非常に腹立たしいです。

被害者救済のために20年以上も活動を続けてこられたアラン・ベイツさんは、ご自身を含めて十分な賠償金を受け取れていない被害者のために現在もまだポスト・オフィス郵便公社が民営化された企業)を相手に闘っていらっしゃるそうです。

こんなにひどい冤罪事件になって、郵便公社や富士通には嘘をついていた人達や事実を隠匿していた人達がいるのに、そのせいで被害が大きくなり死んだ人もいるというのに、責任を追求された人はいないんだそうですよ。

郵便公社のトップだったポーラ・ヴェネルズ氏は、この問題の渦中に郵便公社への貢献を理由に大英帝国勲章(CBE)を叙勲されているんですけど、この人のせいで被害は大きくなったとも言えるんです。

この人が繰り返し会計ソフト「ホライゾン」に問題があることを否定し続け、「冤罪の証拠は何もない」と疑惑を否定し続け、独立調査員の調査を妨害し(結局調査員は解雇された)、元受託郵便局長達との調停も中止したんです。

ドラマが放送された後、この人は勲章を返還するべきだという署名が100万人以上集まったそうですけど、当然だと思いますね。なぜ会計ソフトに問題がある可能性を考えて調査をしなかったんでしょうか。問題があることを知っていて、それが露見しないようにする必要があったとしか考えられないです。

富士通はどうするんでしょうかね。謝っただけで済む問題ではありませんよ。賠償金を払わないわけには行かないでしょう。

事件から時間がかかり過ぎています。早く金銭的な賠償を終わらせて、被害者の皆さんに区切りを作ってあげて欲しいです。


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