私は岡山県北西部にある成羽(なりわ)という町の出身です。
岡山県北西部は、隆起した丘陵地を川が深く削ったV字渓谷の地形をしているのが特徴ですが、成羽川と島木川というのが合流する所に広がる平野に町の中心部があります。
江戸時代には藩の陣屋があり、総門の前に作られたのが総門橋という最も古い橋です。大きな石垣に囲まれていた陣屋の跡地には、現在建築家の安藤忠雄氏が設計した美術館が建っています。私の実家は、この美術館の近くにあります。
小さな田舎町ですが、歴史のある文化的な町で、私が子供の頃には人口が1万人ほどの活気溢れる町でした。商店街は買い物客で賑わい、映画館もあったのです。
毎年夏には江戸時代から続く歴史ある花火大会が催されたり、秋には、この町出身の洋画家で倉敷市の大原美術館が所蔵する美術作品を集めたことでも知られる児島虎次郎を記念した芸術祭が開かれるなど、成羽はこの地域で文化的にも中心的な町でした。
化石や珍しい地質などでも有名で、私も子供の頃には川や山で遊びながら貝やシダ植物の化石探しをしましたし、国内外の大学の研究者が地質の研究にやって来たりしていました。
今では過疎が進んで人口が減り、商店街はショッピングセンターに買い物客を奪われて多くの店が閉店し、町は見る影もなく寂れてしまっています。
最近は、この町のことを懐かしく思い出すこともなかったのですけど、つい先日、国土交通省が全国各地の河川水位を監視するために設置しているライブカメラのことを知りまして、成羽川の様子を見ることができるサイトを見つけたのです。
監視カメラは数ヶ所に設けられているようですが、そのうちの一つが実家に近い場所にあり、総門橋周辺の様子を写しています。その画像は、私が子供の頃から見慣れた景色なのでした。
十数年ぶりに見たふるさとの町は(と言っても川と山しか写っていませんが)想像していた以上の田舎に見えました。
最近、私はその河川監視カメラサイトを毎日のように見ています。
人々が堤防を散歩したりランニングしたりしていそうなものですが、一度も人が写っているのを見たことがありません。人の気配が全く無く、死んだ町のようです。
それでも、天気の加減で色を変える山や川面、霧で霞んだ山や、薄っすらと雪で覆われた堤防などを見ながら、美しかったふるさとの景色を思い出すのです。
私が子供の頃は、堤防もコンクリートではなく草で覆われた土手でした。「となりのトトロ」という映画に出てくるような風景が広がる、美しい自然に恵まれた町でした。
町営住宅に住んでいましたから、近所には子供がいっぱいいました。年齢はいろいろでしたが、近所の子供達と山や川や田んぼや広場で遊んでいました。
谷川でサワガニ取りをしたり、お腹が空いたらサシッポを摘んでかじったり。虫を捕まえたり、おたまじゃくしを集めたり、皆んなで材料を持ち寄って山の上に秘密基地を作ったり、竹やぶの奥にターザンごっこができる遊び場を作ったり。
夏には、当時は水量が多かった成羽川に子供達だけで水遊びに行っていました。
子供達だけで遊びまくっていましたけど、今の時代だと危ないからと親がついて来るのでしょうか、子供達だけで遊ばせないんでしょうか。
一年中、夏でも冬でも、遊び場などなくても、遊具などなくても、いくらでも楽しいことをして、日が暮れるまで遊んでいたものですがね。
河川監視カメラの画像を見ながら、そんな何十年も前のことを思い出したりしています。
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