カリカチュア(Caricature)とは、人物の性格や特徴を際立たせるために(しばしばグロテスクな)誇張や歪曲を施した人物画のこと。滑稽や風刺の効果を狙って描かれるため、現在ではしばしば戯画、漫画、風刺画などと訳されまた同一視されるが、もともとは16世紀イタリアに出現したと考えられる上のような技法・画風を指して使われた言葉である。オーストラリアの風刺漫画家として人気があり私も大ファンであるマーク・ナイト(Mark Knight)さんは、人種差別とは無縁の人です。
グーグルで「mark knight cartoons」というキーワードで画像を探せば、彼はこれまで描いてきた風刺漫画のいくつかを見ることができますよ。本来は、ツイッターやフェイスブックのページで漫画を公開していますが、現在アカウントにアクセスできません。
理由はもちろん、先日のセリーナ・ウィリアムズの全米オープンテニス決勝での態度を風刺する漫画を人種差別的だと批判する人達がいるからです。
問題になっているのは、この漫画。
決勝でのセリーナの態度や彼女の特徴を際だたせるために、カリカチュアされています。ひと目でセリーナだと分かり、あの決勝での騒動をうまく表現しています。
近くに赤ちゃんのおしゃぶりが落ちているのは、英語における「Spit the dummy」という慣用表現のせいです。赤ちゃんのおしゃぶりは「ダミー(dummy)」と呼ばれ、それをペッと吐き出す(Spit the dummy)が「かんしゃくをおこす」という意味で使われるのです。
スポーツの世界にも性差別があるのは事実ですけど、だからといって全米オープン決勝でのセリーナの態度が許されるわけではありませんよ。
セリーナはあの決勝で、ぜひとも勝ちたいのに思うようなテニスができず、第1セットは完敗して苛立っていました。次第にフラストレーションを制御できなくなっていました。
明らかに彼女の態度は行き過ぎでした。プロのスポーツ選手ならば、別の対応ができたはずです。
マーク・ナイト(Mark Knight)さんは、数日前にはこんな漫画も書いています。
オーストラリアのテニス選手ニック・キリオスは、試合中に審判に暴言を吐いたり、ラケットを叩き壊すはもちろんのこと観客にラケットを投げつけるなど問題行為を連発し、粗暴な振る舞いのため悪童とも呼ばれておりますし、対戦相手に問題発言をするなど毎回トラブルを起こしています。
今年の全米オープンでも、いつものように腹を立てて暴言を発し、集中力を失っていたキリオス選手に、審判が結構な時間をかけてアドバイスし、その後キリオス選手は精神的に自分を立て直して試合に勝ったのですけど。風刺漫画は、本当はこうするべきだったというマーク・ナイトさんの意見が反映されています。
Political Correctness(政治的・社会的見地から見て差別的でないこと)」を追求するあまり、それが行き過ぎてしまうと私達の文化はとても退屈で活力のないものになってしまう場合があります。
自由に意見を言い、誰かを批判できるというのは良いことではあるけれども、こんな風刺漫画のカリカチュアですら、人々が差別ととらえはしないかとPolitical Correctnessを検討しながら描かなくてはいけなくなれば、カリカチュアの文化はどうなってしまうんでしょうね。
オーストラリアでは、大半の人がこのセリーナの風刺漫画を人種差別的だとはとらえていません。私もそう思います。
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