2011年12月25日

クリスマスとシーフード

昨晩は、かなり激しい雷雨となったが、今朝は雨は上がっていた。

雨は上がっていたが湿度が高く、これで気温が上がったら、私にとって最悪のコンディションになると思うと、暑いキッチンでローストディナーの準備というのが思いやられた。

ところが、夫の話によると、義母はローストの予定を変更し、今日はシーフードのディナーになると言う。昨日の早朝、メルボルンのヴィクトリアマーケットまで新鮮なシーフードの買い出しに行ったらしいと言う。

やれ、助かったと心底ほっとした。

義母の家に着いたのは午前11時頃。

「ハッピークリスマス!
今日のクリスマスは私達6人だけよ!
私は何にもしなくても良いことになっているのよぉ!
なんて素晴らしいのでしょうねえ。」

「???」
何のことを言っているのか分からなかったが、次第に事情が飲み込めて来た。

シーフードやアンティパスト用の美味しいものをたっぷり買い込んでおいたので、彼女はお料理をしなくて良いということを喜んでいるのだ。後は私達家族が盛りつけをしなさいと言う。食べ物は何も準備はできていなかった。買って来た状態のまま冷蔵庫の中に詰め込まれていた。

家に着くなり、やっぱりキッッチンで働くことになるという状況については何も変わりはなかったのだ。まずワインでも飲みながらゆっくりおしゃべりということには決してならない。

キッチンはオーブンを使っていない分だけ暑さはひどくなかったが、やっぱりクリスマスプディングは鍋の中で湯気を上げていた。

義母は長年学校の先生をしていたから、今でも何事につけても「指導」せずにはいられない。これをこの皿に盛りつけろ、スモークサーモンはこのように処理しろ、ハムはこのように切れ、アスパラガスはこのように乗せろ。矢継ぎ早に「指導」が飛んでくる。私達は「指導」された通りにアンティパストを盛りつけた。

アンティパストの大皿は、すぐにテーブルへ運ばれ、クリスマスディナーは12時前から始まった。


最近、毎日のようにご馳走を食べ続けているから、空腹になる暇がない。このアンティパストは美味しかった。とても美味しいスパークリングワインも用意してくれていて、私も夫もすぐに満腹となった。

「これで満腹というのは困るわよ。これからメインコースなのに!」
「メインコースは、すぐには無理よ」と、私達は主張したが、義母はすぐにメインコースの準備に取りかかった。

「ヒロコ、仕事ですよぉ!」とキッチンから呼ぶ声がする。
行ってみると、冷蔵庫から紙包みをいくつも取り出していた。それらは、ヴィクトリアマーケットで買って来たホタテ貝やイカやエビなどであった。

義母は、今日はお休みのはずで、実際に料理や盛りつけなどの仕事は私達がしなくてはならないのだが、彼女は自分が希望するペースで希望するように私達に働いてほしいので、お酒も入ってキビキビと働かない私達への「指導」は厳しくなっていく。

娘のサチには、ポテトサラダを作れと言う。
男達は、主に運び役。指示通りに物を運んでゆく。

私にはホタテとイカを焼けと言う。
「味付けはどうするの?」
「ただ焼くだけで良いのよ。味が欲しい人は塩こしょうをふりかけて食べればいいじゃない?」
「ええっ、そんな…。イカはせめて下味を付けたら?」
「下味?どのくらい時間がかかる?」
「すでにスライスしてあるイカだから、10分も漬けとけば良いと思うけど。」

私の提案した味付けを許可してくれたので、私はニンニク、ショウガ、唐辛子、醤油、オリーブオイルの漬け汁を作ってイカを漬けた。この家には酒やみりんは無いので、ワインでも入れようとしたが、これは却下。

ホタテはただ焼けという強い「指導」であったから、塩こしょうでグリルしようとフライパンを熱くして焼き始めると、

「オーノー、それは熱すぎよ!そんな強火で焼いてはダメ!もっと優しく弱火で焼かなければ!」
そう言って義母は、横から火を弱めた。こんな弱火にしたら汁が出てベチョベチョになるぞ!と思ったら、やっぱり思った通りホタテは香ばしく焼けるわけも無く、びしょびしょに汁が出てホタテの汁煮状態に。

義母は、そのホタテをすくい取って皿に乗せ、フライパンにたまっている大量のホタテから出た汁をジャッと流しに捨てた!

次は、イカ。今度は私流にやるぞ!と決めて、フライパンを熱していると、彼女は全てのメインコースをテーブルに運び終わらせ、後はイカを待つだけだとプレッシャーをかけてくる。

なぜ、そんなに急ぐのか?
みんなお腹がいっぱいでまだメインコースは食べられないと言っているのに…。

急げ、急げ、とせかされつつイカを焼いた。美味しそうなおいがしていた。火の前に立ってイカやホタテを焼くのはとにかく暑かったし、汗がダラダラ流れるのを耐えながらのクリスマス料理。ローストの方がまだましである。

イカが焼き上がって、皿に乗せてテーブルに運んでいくと、もうみんな食べ始めていた。

娘のサチがひどく深刻な顔をしていた。サチは義母の強い「励まし」を受け、生まれて初めて生牡蠣を食べたところだったのだ。「吐きそうだ…」と言った。



山盛りのエビもロブスターも、イカ以外の全ては味付けがされていない。ただ、塩水でゆでただけ。もちろん、牡蠣は生。

「味付けなどしなくても良いのよ。ロブスターの味、ホタテの味、素材の味で良いのよ。」と義母は、みんなに食べろ食べろと勧める。

しかし、みんなお腹がいっぱいだから、とても食べられない。特に生牡蠣には、なかなか手を伸ばす者がいない。少なくとも我が家族は、生牡蠣はちょっと…。

せっかく、ヴィクトリアマーケットまで、あんなに朝早起きして買い出しに出かけ、こんなにたくさん買って来たのに、食べないなんて無責任だと、彼女の「指導」はどんどん厳しくなる。

そのうち、お皿に載っているものを確認し始めた。牡蠣を食べてみようとしない息子のカイには、何でも新しい食べ物に挑戦してみることは人生で大切なことであるとお説教まで始まった。

私は、かなり頑張ってロブスターを口に運んでいた。
「あっ、ヒロコ!ロブスターはね、その白い身のところを食べるのよ。黄色いのは食べてはダメ!」
「黄色いのって、この味噌のこと?」
「そう、それは食べないのよ。食べれるのは白い身のところと足の中の身ね。」
「何を言っているんですか!エビの味噌もカニの味噌も、これはとても美味しいものです。」

そう言ってロブスターの黄色い味噌をソースのようにして食べる私を見て、びっくりする義母。彼女は、シーフードを食べ慣れていないのだ。料理法も知らないことは明白だ。

山盛りのご馳走はあまり減らなかった。食べろ食べろと励まされ続けたが、食べられないものは食べられない。

「まあ、いいわ。ドギー・バッグ Doggy Bag (持ち帰り用の袋)にしてあげるから、あなた達持って帰りなさい。」

義母は、がっかりしていた。

デザートは、朝からゆで続けていたクリスマス・プディングである。この写真は撮り忘れてしまったので、参考資料として BBC の Good Food サイトに載っていた写真をお見せします。義母の姉が毎年作るクリスマスプディングは、これにそっくりです。


これに、ブランディーバター、カスタード、アイスクリームを添えて食べた。もうとても食べられないと思ったが、なんとか食べた。

私が作って持って行った「イチゴのババロア」は全く出番がなかった。私達家族4人と義母と義母のパートナーの6人しかいなかったのに、20人分くらいの食べ物があったのだから。

明日からしばらく何も食べなくても大丈夫な気がする。というか、胃が相当拡張してしまっていると思うので、プチ絶食でもして、胃を縮めるとともに休ませてやらなければ。

でも、ドギーバッグにしてもらって来た大量のシーフードを、このまま腐らせるのももったいない。生牡蠣は…、あのままでは誰も食べないであろうから、牡蠣フライにでもしてみるか。

ああ、しかし、贅沢なことだな、私達。
飢餓で死んでゆく人もいるっていうのに。


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