2013年2月15日

タランティーノと恐るべき俳優

クウェンティン・タランティーノの映画は、その凄まじい暴力描写で毛嫌いする人もあるが、彼の映画の暴力は、映画というメディアの中で表現されるエンターテイメントとしてのバイオレンスで、見ていて気分が落ち込むようなものではない。

そのバイオレンスは、ほとんど悪乗り気味であり、私はそれを見て怖いなどとは感じず、つい笑ってしまうのだ。人が次々に殺され、血しぶきがあがり、肉が吹き飛ぶが、タランティーノはそれをすっかり映像として見せるので、これは作り物だとはっきりと自覚しながら見ることができる。

もう何年も前になるが、「パルプ・フィクション」を見て、映画作りがうまい監督だと思った。でも、その映画は、私にとってはそれだけの映画だった。

ところが、昨年のこと。ビデオショップから借りてきたDVD「イングロリアス・バスターズ」を見て、タランティーノの映画がどうのこうのじゃなくて、一人の俳優の演技に驚愕した。

その人の名前は、クリストフ・ヴァルツ。オーストリア出身の俳優である。


この人は、映画「イングロリアス・バスターズ」の中で、悪役ナチスの親衛隊将校を演じたのだが、ブラッド・ピット他この映画に出演している全ての俳優を食ってしまう名演技を見せる。

ナチス親衛隊将校ハンス・ランダ

穏やかで、上品で、ユーモアに満ち、大変知的な人物だが、その微笑みの向こうに残忍で冷酷な性格が隠れているのを感じさせるから、見ているこちらは、彼の静かな威圧に緊張感で体が硬くなる。

もちろんタランティーノ監督のうまさもあるが、この俳優の演技力はものすごい。英語とフランス語とドイツ語とイタリア語を流暢に操り、演じるのはほぼ不可能なようなキャラクターを見事に演じた。

2009年から10年にかけて、アカデミー賞を含め、世界中のあらゆる映画賞を取ったというのは納得の名演技である。しかも、タランティーノの映画に出ての受賞だから普通ではないのだ。

このクリストフ・ヴァルツが、タランティーノの新作「ジャンゴ・アンチェインド」に再び出演しているので見に行った。

賞金稼ぎのドクター・シュルツ

微妙な感情表現がすばらしい。キャラクターとしても愛さずにはいられないような役で、こりゃ再びタランティーノの映画でアカデミー賞を受賞しても不思議ではない。ホント、うまいです!

「ジャンゴ・アンチェインド」でも、もちろん人が殺されまくります。ひどい拷問を受けます。血しぶきが上がりまくります。肉も吹き飛びます。暴力描写のオンパレードです。でも、映画館に来ていた人たちは、そういうのを期待してきているので、「おいおい!」「うっへえ!」と嘆きながらもタランティーノ流を楽しんでいました。

この映画は、主演がジェイミー・フォックスで、彼もなかなか良かった。悪役のレオナルド・ディカプリオも大変うまかった。でも、今回他の俳優を食っちゃったのはこの人です!


サミュエル・L・ジャクソン!

でもね、各映画賞にノミネートされたのはクリストフ・ヴァルツだけで、レオナルド・ディカプリオやジャクソンはノミネートされないんですね。

まあ、とにかく楽しめる映画ですよ。この週末、映画を見に行くならおススメです。

Django Unchained


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