ラベル 盲導犬 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 盲導犬 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年11月13日

うらやましすぎる

英国チャンネル4の「ザ・スーパーヴェット(The Superset)」という番組にすっかり魅了されて、連日同じエピソードを繰り返し見ては盲導犬パピーのモリーを思い出す日々。

オーストラリアではSBSが放送しているんですが、放送したのはたったの4エピソード。本国英国では7シーズンと他に幾つかの特別シリーズも放送されているというのに。

見たいと思っているエピソードの一つは、愛犬をフィッツパトリック医師に診てもらうためにスイスから車でやって来たおじいさんと10歳チワワのストーリー。


また他の犬に襲われて下顎に大怪我を負ったゴールデンレトリバーの子犬の最新エピソード。


見たいけど見ることは出来ません。

だから見ることのできるいくつかの古いエピソードを繰り返し見ては、モリーのことを思い出しているわけです。

そんな私に届いた岡山在住のJ子からのメッセージ。

「♪ 今ダイスケとリラックスタイムです♪」

ダイスケというのは、彼女の愛犬柴犬。すぐにまたモリーを思い出して胸がキュンとする私でしたが、そこに届いた次なるメッセージ。

件名なし、コメントなし!

J子は写真を送ってきたのです。


傷口に塩を塗り込むようなJ子からの写真。

うらやましい〜!

お帰りの前に1クリック を!



2016年7月11日

我が家は危険がいっぱい

座りっぱなしのせいで腰痛が悪化している私ですが、私たち家族が現在住んでいる大きな家には、その腰痛をさらに悪化させる危険がいっぱいあることに今さらながら気づきました。

まず滑りこけ事故の原因となる石の板。盲導犬パピーのモリーがかじってボロボロになったカーペットの下から釘が突き出て危険なため、それを覆うために置いている石の板ですが、これが滑るんだわ。しょっちゅう通るキッチンとダイニングの境い目に置いてあるため、うっかりすると滑り転びそうになる。その度に、ズキンと腰痛が襲う!

モリーがかじったのはそこだけではなく、居間のカーペットはいたるところがボロボロになっているのだけど、暖炉の前の石板とカーペットの境目は凄まじいまでにかじられて、何十本もの釘が露出している。うっかりしているとその釘が足の裏に刺さるのです。

何度も釘が足の裏に刺さって怪我をした私は十分注意しているから大怪我はしないけど、娘のサチは先日足の指が裂けた。釘が刺さった程度じゃなくて、刺さった釘のせいで裂けたのよ!大量出血で病院に行ったほうがいいかもしれないと思ったほど。

カーペットを全面張り替えるのは貧困家庭の我が家には無理な話で、せめてかじられた危険箇所を板か何かで覆って欲しいとうちの夫に頼み続けて1年以上になりますが、何にもしてくれません。

先日、ついに、ついに、カーペット補修用品を買いに行ったのだけど、その補修用品はかじられたカーペットの所に置いたまま。おそらくこれからまた1年くらいそこに置かれたままになるのでしょう。最近の夫は、そんな感じ。家のことはもう全く何もしてくれませんからね。コミュニティーのためなら、また親しくしている老夫婦のためなら、身を粉にして何でもするのに。

それはともかく…。

この家は、背の高い家族が自分たちの身長に合わせて作った家。背の低い(日本でなら平均よりやや低めなだけ)の私には、何もかもが高すぎる。特に困るのがキッチンや洗面所のカウンター。私のみぞおちの高さくらいあるのよ。だからキッチンにもバスルームにも洗濯室にもいたるところに踏み台が置いてあるのですけど、うっかりするとその台を踏み外して落ちる。

わずか10cmほどの台ですから落ちて大怪我はしませんけど、その度にズキンと腰痛が襲う!「ズキン!」がひどい時はしばらく起き上がれない。先日は熱い鍋を持っていた時に踏み台がずれて大やけどをするところだったし…。

キッチンが踏み台だらけというのも、ホント危ないんですよ。でも、踏み台なしでは料理なんてできないしな。

さらに、私はヒザ痛にも苦労しておりまして。

いえいえ、例の半月板損傷の件は、あれはもうすっかり治ったのです。膝の関節内部に激痛が走るようなことはありません。現在の問題はですね、膝の裏に再び出現したベーカー嚢胞(Baker's Cyst)なんです。両脚の膝裏にできているの。原因が自分でも分かりませんが、膝裏のこのコブがですね、痛いのよ!

膝が痛い人にとって、階段の多い家は大変なのです。

気をつけなくちゃな…。

お帰りの前に1クリック を!



SaveSave

2016年1月22日

物語「モリーとネズミ」

モリーは盲導犬パピーです。クリーム色のラブラドールレトリバーで、ぬいぐるみのように柔らかくてふわふわした女の子です。リストン家にやって来た時は生後7週目で、まだ裏庭に出る階段も上れない小さな子犬でしたが、身体はどんどん大きくなっています。


リストン家にはとても広い庭があります。裏庭の外側に出ると、大きなユーカリの木がたくさんある広い草地があって、モリーはそこを走り回って遊ぶのが大好きです。

お母さんが野菜を育てている畑や花壇の世話をする時、モリーは一緒に行ってお母さんがすることをよく見ています。お母さんが草を引き抜いているのを見て、モリーも真似をして草を抜いてみます。

「ああ、ダメダメ、それは抜いちゃダメよ」

お母さんが大きな声でなにか言います。モリーは嬉しくなってもっと草を抜きます。

「ダメよ、それは草じゃないの」

お母さんがモリーのお手伝いをやめさせようとするので、モリーはなんだかよく分からなくなってしまいます。

「ああ、いんげん豆がまた噛じられてるわ。カタツムリやナメクジじゃないでしょ、この噛じり方は。ポッサムかしらねえ…、でもポッサムってインゲン豆食べるの?」
「ほら、地面に穴が開いているのよ。一体これは何かしらねえ…」
「犯人は、この穴を通って入って来てるんじゃないの?結構小さいのよこの穴…」

お母さんは、畑の世話をしながら何かずっとモリーに話しかけるんですけど、モリーにはよく分かりません。でも、一緒に畑の周りで遊ぶのは大好きなんです。

そして、よく晴れた気持ちのいい春の初めの朝のこと。

お母さんと娘のサチちゃんが洗濯物を干しに外に出ようとしていました。

「モリー、洗濯物を干しに行くよ。モリーもお外に行こう!」

お母さんが「モリー」と呼んでいます。ドアを開けて呼んでいますから、外に出させてくれるようです。モリーは嬉しくて、走って外に出ました。

お母さんとサチちゃんが洗濯物を干している間、畑の周りで遊んでいたモリーは、小さな動く物を見つました。「なんだろう?」モリーは自分でも驚いたのですが、思わずその動く物を捕まえていました。すると、口にくわえたそれが暴れたので、思わずブルブルッと振ってみました。

「お母さん、見て!モリーが何か見つけたみたいよ」
「あっ、ホントだ。モリー、何なの?」

お母さんが「モリー」と呼んだので、モリーはお母さんの方を見ました。

「あれ?何か口にくわえてるよ!」
「ホントだ、何だろ?」

お母さんがモリーの方に近づいてきました。モリーはお母さんが追いかけごっこをする気だろうか、それとももう家に入るのだろうかと考えていました。

「ああ、ネズミよ!ネズミをくわえてる!」
「うっそー!」

突然、お母さんとサチちゃんが大きな声をあげました。モリーは、どうしたらいいのか分かりません。

「盲導犬が野ネズミなんて食べたらダメじゃないの?」
「病気になったりしたら困るよ!」
「野生動物の味を知っても困るじゃないの!」
「モリー!ネズミを放しなさい!」

お母さんが「モリー」と言ったので、モリーはお母さんが呼んでいると思いました。「そうだ、今捕まえたモノをお母さんに見せよう!」モリーは、お母さんの方へ走り出しました。口にくわえたものがブルンブルンと左右に揺れました。

「きゃあ、ネズミをくわえたまま来てるー!」
「モリー!ネズミを放しなさい!」

お母さんとサチちゃんが、自分を呼んだのに逃げていくので、どうしたらいいのか分からなくなったモリーは立ち止まりました。その時、くわえていたものが地面に落ちてしまいました。

「あっ、ネズミを放したよ!」
「よーし、いい子よ!モリー、こっちにおいで!」

またお母さんが嬉しそうに「モリー」と呼んでいます。やっぱりこっちに来いと呼んでいるんだ。モリーは地面に落ちてしまったモノを再びくわえると、お母さんの方へ走り始めました。

「きゃあ、拾ったあ!」
「だめえ、ネズミを放しなさいってば!」
「もう完全に死んでるよ、あのネズミ!」

お母さんとサチちゃんが、自分を呼んだのにまた逃げていきます。「追いかけごっこだったのか!」モリーは嬉しくなって逃げるお母さんとサチちゃんの方へ走りました。

「ストップ、ストップ!」

お母さんが「ストップ」と言っています。それが、止まれという意味だと知っているモリーは立ち止まりました。口にくわえていたモノがまた地面に落ちてしまいました。それは、さっきよりもヌルヌルと濡れたようになっていました。その時、息子のカイちゃんが家から出てきました。

「なんだよ、大騒ぎして?」
「カイ!モリーがネズミを捕まえたの!」
「ネズミ?」

モリーは、いつも遊んでくれるカイちゃんも好きです。

「いい子よ、モリー、こっちにおいで」

お母さんが「おいで」と言いました。モリーは、地面に落ちてしまったそのモノをまた口にくわえて走り始めました。

「ぎゃあ、また拾ったあ!」
「腹ワタ出てるよ!もうグチャグチャじゃん!」
「こっちに来るなあ!」
「ストップ、ストップ!」

お母さんがまた「ストップ」と言いました。モリーはまた立ち止まって、口にくわえていたものを落としました。

「カイ、そこの使っていない植木鉢をネズミにかぶして!」
「ええっ、オレがあ?」
「男でしょ!お母さんは見たくないのよ、ネズミは苦手なの!」
「しかも、腹ワタ出てるし!」

モリーは、どうしたらいいのかよく分からなくて、困っていました。すると、いつの間にか近づいてきたカイちゃんが、せっかくお母さんとサチちゃんに見せようと思っていた畑の近くで捕まえたモノに固いものをかぶせてしまいました。「モリー、おいで!」お母さんがまた呼んでいます。でも、捕まえたモノは、カイちゃんのせいでくわえられません。もうあきらめるしかありません。

仕方なくモリーは、お母さんの方へ走って行きました。

「カイ、あんたあのネズミを捨てるか何処かに埋めて!」
「オレ、嫌だ。サチがやれよ!」
「ええぇ、私がぁ?」

サチちゃんはスコップを持つと、カイちゃんがかぶせた植木鉢の方に歩いて行きました。


サチちゃんが後から語った話によると、モリーが畑の近くで捕まえたのは、やはりネズミだったそうです。それはもうネズミとしての姿をとどめていない哀れな姿だったそうです。可哀想なネズミのために、優しいサチちゃんはそれをゴミ箱に捨てることはせず、モリーが見つけて掘り出さないように深い穴を掘って埋めてやったということです。

モリーの思い出話でした。

ああ、I miss her ...


お帰りの前に1クリック を!



2015年10月20日

セラピー犬として幸せに

(昨日のつづき)

モリーがいなくなって2ヶ月になろうかという頃、アドバイザーから電話がありました。

「モリーは元気ですか?アセスメントはどうなりましたか?」
「アセスメントは合格でした」
「ああっ、よかった!」
「でも、条件付きでということなんです。合格だけど継続的に観察が必要との報告でして…」
「何が問題なんでしょう…?」
「ええ、それで今日はお電話させていただいたんですけど、モリーは階段に何か問題がありましたっけ?」
「階段?」

我が家にはいたるところに階段がありまして、家の中にも外にも、高いの低いのいろいろあって、モリーはまだヨチヨチ歩きの頃から階段には慣れ親しんでおりました。

バスルームが2階にあるのでシャワーの時には2階に上がるのですが、その階段が比較的薄暗いためか下りる時に怖がったことがありました。

それ以外は、公園にある階段の間から下が透けて見える怖い階段もショッピングセンターの超高階段も、陸橋の階段も、モリーはいつでもへっちゃらでした。

「家の階段を下りるのを怖がったことはあるんですけど…」
「いえいえ、下りるのではなくて上がるほうが問題らしいんです」
「階段を上がるのが?モリーは階段を上がるのはへっちゃらでしたよ」
「そうでしたよねえ」

アセスメントの時に、階段が上がれなかったんですって。

トレーナーの皆さんは、犬のことを大変よく理解するプロですから、モリーは結果的には階段を上りましたけど不安を見せたというのが「要観察」との条件付き合格になった理由だそうです。

そして、本格的な訓練が始まりました。

ところが…。

ある日、またアドバイザーから電話が。

「モリーは盲導犬にはなりません(Molly is not going to be a guide dog.)」
「やっぱり階段がダメですか」
「階段というかですね、いろいろ不安があるようなんです。トレーナーがこれ以上無理をさせるのは可哀想という判断をしたようで、訓練は中止したという報告です」

後日、トレーナーの方ともお話をする機会があったのですが、モリーは階段だけでなく、他の犬に対して、また人が大勢いる場所で「不安」を見せるんだそうです。「Too anxious」と表現されていましたが、盲導犬になる犬は、どのような状況でも自信を持って行動できないといけないんです。

「やっぱり、突然知らない人の家に行かせたりしたのが問題だったんでしょうか?」
「そんなことはないですよ。引き取っていただいたパピーウォーカーはベテランで、今まで何匹も育てていますし」
「私の膝のせいで、トレーニングが十分ではなかったんでしょうか」
「そんなことはないですよ。モリーは残念ながら盲導犬に向いていなかったということです。よくあることです」

そして、アドバイザーの話によると、モリーは視力を失った男の子がいる家族にセラピー犬として引き取られることが早速決まったとのことでした。

セラピー犬も、目の不自由な方の大きな助けになります。視力を失って精神的に不安定になる人も多く、そうした人を慰め励ます大きな力になることができます。また視力障害のある子供が、盲導犬と一緒に暮らすことになる将来の生活に備えて、犬のいる生活や犬の世話に慣れるためにペットとして引き取られることもあるのです。モリーは、後者の方でした。一時的にその家族の家で暮らすのではなく、ペットとして引き取られるとのことでした。

「その男の子のご家族は、大変喜んでいらっしゃるんですが、様々な準備が必要でしてね、その子の家に行くのは2週間後なんです。それまでの2週間ですが、モリーを預かっていただく家族が必要なんですが、興味がありますか?」
「あります、あります、預かりますっ!」
「ああ、でも、ヒロコさんは膝が痛いんでしたよね…」
「いえ、もう大丈夫なんです。モリーがいなくなってすぐに手術をしたんですよ!今では普通に歩けるんですっ!」
「そうなんですか!じゃあ、預かっていただけるんですね!」
「はい!今から行きます!」

実際は、翌朝まで待たなくてはなりませんでした。電話があったのは夕方で、外は真っ暗でしたし。私は、早速、夫に電話をしました。

「ええっ!ほんとに!やったぁ!ヒロコ、今すぐ行って!」
「今はダメでしょ。もう真っ暗だし、犬舎も閉まってるよ」
「いや、あそこはいつでも人がいるよ。行けば開けてくれる!」と大興奮。

まあ、こうしてモリーが我が家に戻って来たのでした。

引き取りに行った時は、皆さんご想像のとおりでね、「モリー!」と呼ぶと向こうから猛スピードで走って来まして、私に飛びかかってきました。顔をペロペロと舐めまくり、ちぎれんばかりにしっぽを振り、ヒンヒンと鼻を鳴らして狂っちゃいましたね。

盲導犬にならないのだから、もうどんな遊びをしてもよいと言われまして、フェッチ(ボールを投げて取って来させる遊び)や綱引きや庭を駆け回る遊びを思う存分やらせてやり、私達は2週間大いに楽しく過ごしたんです。

おトイレに外へ出してやったら
泥遊びをしていたらしい

再び訪れた別れは、最初の時ほど辛くなかったです。その男の子の家族に愛され可愛がられると分かっていたし、おばあさんになるまでずっとその子と一緒に楽しく幸せに暮らしていくことだろうと思うと、安らかな気持ちで2回めの「さようなら」を言うことができました。

しばらくして、その男の子の家族からGuide Dog Victoria を通して写真をいただきました。

心配顔のモリー

ぬいぐるみに囲まれてちょっと戸惑い気味。モリーの「心配顔」は、すぐに「幸せ顔」に変わったことでしょう。


お帰りの前に1クリックを!



2015年10月19日

さようならモリー

(昨日のつづき)

ある日のトレーニング中のこと、私の右膝にピキーン!と痛みが。

私の右膝は、息子のカイがまだ赤ちゃんだった頃に、抱っこしながら階段を下りていた時にひねってしまい、3ヶ月ほど痛みが続いて大変だったことがあるんですが、それ以来、何かのひょうしに度々痛くなる古傷でして。

ピキーン!ときた時は、「おっと、またいつもの膝痛だぞ」と思っただけだったのです。

しかし…。

膝が痛くなれば、痛みが治まるまであれですよね、無理に歩きまわらないようにするとか、無理をせずにしばらく安静にしておくとか、普通そういう対処法で回復を図るものでしょ?

モリーのトレーニングは、毎日2回おこなわなければなりませんでした。

膝が痛くても我慢して歩き続けるしかなかったんです、毎日2回。しかも結構な距離を。

商店街とかショッピングセンターは、車で10分ほど行かなくてはなりません。モリーを車にのせるのもトレーニングの一部でしたが、モリーはトレーニングが大好きだから自分から喜んで車に乗り、所定の位置にちゃんと座ってくれるので、そこは簡単だったんですけどね。

毎日毎日、膝の痛みを我慢して歩き続けているうちに、痛みは悪化して普通に歩けなくなっていきました。

右膝にはサポーターを、そのうちもっとしっかりと膝を支えるブレースを装着してトレーニングに励みました。賢いモリーは、私がブレースを膝につけ始めると、そのマジックテープの音を聞いてすぐにやってきて、私の前にちゃんと座って待ちます。

可愛いんです、モリーったら。

しかし、膝は悪化の一途をたどり、強い痛み止めまで服用するように。(そう、薬飲んでまで歩いていたの!)そのうち、膝裏に巨大な膨らみが出現。これが痛いのなんのって!

医者に相談の後、MRI検査を受けたところ、右膝内側の半月板複雑断裂と分かり、膝裏の巨大な膨らみ(長さ10cm以上)は、Baker's Cyst (ベーカー嚢胞)といって、膝の裏側の関節包から漏れ出た滑液が溜まって袋状に突出したものなのだそうで。骨液はすでに袋から漏れ出している可能性あり。手術するしかないって…。

この頃はもう、私、杖なしでは歩けないほどになっていました。右膝が痛いから車の運転も大変。

モリーのトレーニングは、距離を短くするとか、夫が仕事の後でやってくれる1回だけで済ませるとかで対応してきたものの、やっぱりこの状態はパピーウォーカーとして無責任だなと…。

モリーが犬舎に戻るまで後1ヶ月ちょっと。

どうするか?

最後の1ヶ月ちょっとは、主に大きなショッピングセンターや駅、公共の交通機関(電車・バス・トラム)、大勢の人がいる様々な場所へモリーを連れて行き、そうした環境に慣れさせる必要があります。それができなくなっているわけです。

この件については、もちろんアドバイザーの方にずっと相談していましたし、実情を報告していましたが、アドバイザーの方から「別のパピーウォーカーにモリーを預けましょう」という話はなかったんです。

私達は苦渋の決断を下さざるを得ませんでした。

モリーは、ベテランボランティアの方が残りの1ヶ月を引き取ってくださることに決まり、別れが突然にやって来ました。

そのボランティアの方のところにはペットの犬もいて、他のパピーもトレーニング中で、モリーにとって良い環境だろうということでした。

ある日の夕方、アドバイザーから電話がありました。翌日の午前中に、モリーを Guide Dog Victoria(ヴィクトリア州盲導犬協会)のオフィスに連れて来て欲しいとのことでした。

「明日の朝、モリーが行っちゃうよ…」
「えええっ?明日?なんでそんな突然!」

詳しいことを聞いていなかった息子のカイと娘のサチは、ショックを隠せず。

盲導犬のパピーは1年しか一緒にいられない。そう納得して接してきても、やはりねえ愛情はわくし、1年近くも一緒に暮らしていればもう家族の一員になっちゃってるし。別れの時が来ると、やはり動揺しますよ!

いつでも一緒だった

翌朝は、夫も娘も息子も、家を出る前にモリーに「さようなら」の挨拶。モリーは分かっていないから、いつもの様に玄関横の窓から、みんなが見えなくなるまで見送ります。それを見てる私は、喉が詰まって苦しくて…。

お父さんが草を切っているのを見る幼いモリー

「さあ、行こうか」

車のキーの音を聞くと、「お出かけだ!」「トレーニングだ!」と思うんでしょうね、大喜びで車に飛び乗るモリー。これがお別れとは知らない…。

パピーウォーカーとして責任を全うできなかったという罪の意識と、モリーとの別れの寂しさで気持ちが悪くなりながら、私はモリーをアドバイザーのオフィスに連れて行きました。 最初のうちは、大喜びで興奮していたモリー。

「じゃあね、元気でね。アセスメントに合格して、立派な盲導犬になれることを祈ってるよ」

去ってゆく私をじっと見ていたモリーが、何かを察したか「ワンワン」と吠え始めました。ワンワン、ワンワン…。ワンワン、ワンワン…。

建物を出るまで、モリーの吠える声が聞こえていました。

(涙がでる…。)

また、この日の天気がですねえ、爽やかに晴れて、秋の青空がきれいでね。天気が良すぎて余計に悲しくなったんでした。

正直なことを申し上げますとね、私はこの時、モリーがアセスメントに不合格して盲導犬になることができず、警察犬やセラピー犬、PR犬にもなれず、ペットとして売りに出されたらいいのに…などと、パピーウォーカーとしては恥ずべきことを考えていました。

もし売りに出されたら、まず最初はパピーウォーカーにその犬を購入する権利があるんですって。

(そんなバカな。あの賢いモリーが、不合格になるわけないだろ。)

さようなら、モリーちゃん。

グッドラック。

その時の私は、モリーが我が家に戻ってくる日が来るなどと、想像だにしていなかったのだった。

なんですって?
もどってきたぁ?
どういうこと?

(つづく)


お帰りの前に1クリックを!



2015年10月18日

盲導犬パピーの「モリー」

広大な(ちょっと大げさ…でも郵便受けまで玄関から50メートル)敷地の大きな家に引っ越して、家主である義妹の勧めもあって、犬を飼おうかという話になりました。

しかし、私達のライフスタイルに犬を飼うということが合っているのかどうか、私は不安でした。

何事にも三日坊主傾向のある夫、面倒なことはとにかく避けることを信条とする息子のカイ、精神的に不安定な娘のサチ。

結局、犬の世話は、誰がすることになるのでしょうか?(火を見るよりも明らか!)

「まずは1年だけのトライアルというのをやってみよう」ということで、夫がかねてから興味を持っていた盲導犬のパピーウォーカーをやることにしました。

パピーの世話やトレーニングは、ほぼ私の仕事となることを同意の上で。当時、私は専業主婦状態でしたしね。まあ、仕事と思ってやってみるかと。

セミナーに参加してパピーウォーカーについての講義を聞き、Guide Dog Victoria(ヴィクトリア州盲導犬協会)に申し込み、家の環境チェックとインタビューを受けて合格となりまして、昨年6月に我が家にやって来たのが生後7週目の「モリー」。

不安そうなモリー

まず最初のハードルはトイレトレーニング。将来、指示した時におしっこやウンチができるようにしなければなりません。英語で「Toilet on command」と言います。

2時間おきくらいに裏庭に連れて出て(夜中も)、おしっこやウンチが出た瞬間に「クィックィックス」という声をかけてやるんです。賢いモリーは、「クィックィックス」がトイレの指示だとすぐに理解し、裏庭に連れて出て「クィックィックス」と言うと、おしっこやウンチができるようになりました。家の中での失敗はほんの数回でした。トイレトレーニングは、本当にうまくいきまして「流石にガイドドッグのパピーは賢い!」と感激。


しかし…。

あれよね、皆さん。ラブラドールレトリバーという種類の犬は「破壊者」なんですよね!

デストロイヤー!
デモリッシャー!


家の中をかじるんです。テーブルや椅子や、ソファやキャビネットや、カーペットや壁を、あの小さいモリーが破壊しまくるんですよ!(小さいと言いましたが、小さかったのは最初の1ヶ月くらいなもんで、文字通り「あっ」という間に大きくなりました。)

モリーは、退屈していたってのもあるとは分かっているんです。

なにしろ、モリーがやって来てすぐに翻訳の大きな仕事が次々と入るようになり、私はモリーと仕事との両立に大変苦労しました。モリーがしょっちゅう寝ているのでなんとかやれたんですけど。(毎晩遅くまで仕事したし…。)

退屈だったんだよ。もっとかまって欲しかったんだよ。もっと外で遊びたかったんだよ。走り回りたかったの…。

でもねえ、盲導犬のパピーは、普通の子犬が楽しむ「フェッチ(ボールや木の枝とか投げて取ってくる遊び)」とか「ダグ・オブ・ウォー(綱引き)」とか興奮させる遊びをしてはいけないんです。しても良い遊びは限られているんです。

モリー、遊びたかったんだよな…。

そしてですねえ、私達、ちょっと買い物に出る時などは、クレートに閉じ込めておく(可哀想な気もするけど)という予防策を講じるべきだったんです。

だって、帰ってきたらこの有様。

カーペットの下のクッション材がボロボロに

トイレットペーパーを持ってきて遊んだらしい

モリーったら、やってくれるんです!

怒ってはいけないと言われていました。だから怒ってはいけないのです。「こらっ!モリー!!!」と名前を言うのもいけないんですよ、こういう状況で。

モリーがいなくなった今も、我が家は傷だらけです。カーペットはボロボロです。いたるところの壁に穴が開いています。これもいい思い出…なはずがないでしょ。


さて、一番大事なトレーニングは、外歩き。最初は、ご近所の散歩から始めます。我が家の周りは田舎環境ですから、草と木ばっかりです。

それから交通量のある道へ、人がいるカフェやお店の近く、公園、階段のある場所、歩道橋、商店街、スーパーマーケットの中、そして小さめのショッピングセンター、大きなショッピングセンターと、段階を追って慣らしていきます。

このトレーニング中の大きなハードルは、物の匂いを嗅いだり、遭遇する他の犬や鳥や猫を追いかけたり、地面に落ちている食べ物に気を取られたり、「あれっ、あれは何だろ!」とよそ見をしたり、そういうことをしないようにしなくてはならないということ。

ただ黙々と、何かに気を取られることなく、歩くことにだけに集中して歩けるようにならなくてはいけないということでして、これがまあ犬の本能に反しているわけですから大変なんです。

ラブラドールレトリバーという種類の犬は食いしん坊で食べることが大好きなので、トリート(ご褒美)のドッグフードを駆使して、このトレーニングをおこないます。

おおっ、ドッグフードといえば。

盲導犬パピーはですねえ、決められたドッグフード以外のものは食べさせないんです。そして、ドッグフードは必ずフードボウルに入れて食べさせます。食べ物は家にあるフードボウルに入っているものだけ。だから、モリーは私達家族が食事をしているテーブルにやってきて食べ物をねだることはありません。だって、そこに自分の食べ物はないんですから。道に落ちている食べ物も「おや、なんだかいい匂い」と気にはなっても、そんな所に食べ物があるわけないんですから無視できるようになるんです。そう、彼女の食べ物は、家のフードボウルの中にだけあるんです。

翻訳の大仕事に追われて毎夜遅くまで仕事をしていましたから、私はどんどん疲れていきました。それでも責任感の強いこと有名な私ですから、モリーのトレーニングには全力を尽くします。(正直、モリーは可哀想だなって思いましたけど、これはいつかモリーが助けることになる目の不自由な誰かのためと信じて。)

このトレーニングも、かなり順調に行きました。ただ、どうした理由かいろんな所でしょっちゅう出くわす「フランキー」という名前のビーグルが、モリーを狂わすんです。フランキーに出くわすと、どんなに美味しいドッグフードを手に「Leave it!」の指示をしても、モリーったら完全に狂っちゃってるから効き目なし!

パピーウォーカーの家からGuide Dog Victoria(ヴィクトリア州盲導犬協会)の犬舎に戻り、本格的な訓練を受けるかどうかをテストするアセスメントの時に、もしフランキーに遭遇したら不合格は必至だだなこりゃ!と、いつも冗談を言っていました。

モリーのことは完全に私任せにしていたわけでなく、夫も時間を見つけてはモリーのトレーニングに励みましたよ。夏場は遅くまで明るいので、夫は仕事から帰ってモリーを連れて出かけていくのです。とにかくいろいろな場所に慣れることが必要ですからね。

ところが、そんなある日のこと。

私の右膝に異変が!

(つづく)


お帰りの前に1クリックを!