2015年10月20日

セラピー犬として幸せに

(昨日のつづき)

モリーがいなくなって2ヶ月になろうかという頃、アドバイザーから電話がありました。

「モリーは元気ですか?アセスメントはどうなりましたか?」
「アセスメントは合格でした」
「ああっ、よかった!」
「でも、条件付きでということなんです。合格だけど継続的に観察が必要との報告でして…」
「何が問題なんでしょう…?」
「ええ、それで今日はお電話させていただいたんですけど、モリーは階段に何か問題がありましたっけ?」
「階段?」

我が家にはいたるところに階段がありまして、家の中にも外にも、高いの低いのいろいろあって、モリーはまだヨチヨチ歩きの頃から階段には慣れ親しんでおりました。

バスルームが2階にあるのでシャワーの時には2階に上がるのですが、その階段が比較的薄暗いためか下りる時に怖がったことがありました。

それ以外は、公園にある階段の間から下が透けて見える怖い階段もショッピングセンターの超高階段も、陸橋の階段も、モリーはいつでもへっちゃらでした。

「家の階段を下りるのを怖がったことはあるんですけど…」
「いえいえ、下りるのではなくて上がるほうが問題らしいんです」
「階段を上がるのが?モリーは階段を上がるのはへっちゃらでしたよ」
「そうでしたよねえ」

アセスメントの時に、階段が上がれなかったんですって。

トレーナーの皆さんは、犬のことを大変よく理解するプロですから、モリーは結果的には階段を上りましたけど不安を見せたというのが「要観察」との条件付き合格になった理由だそうです。

そして、本格的な訓練が始まりました。

ところが…。

ある日、またアドバイザーから電話が。

「モリーは盲導犬にはなりません(Molly is not going to be a guide dog.)」
「やっぱり階段がダメですか」
「階段というかですね、いろいろ不安があるようなんです。トレーナーがこれ以上無理をさせるのは可哀想という判断をしたようで、訓練は中止したという報告です」

後日、トレーナーの方ともお話をする機会があったのですが、モリーは階段だけでなく、他の犬に対して、また人が大勢いる場所で「不安」を見せるんだそうです。「Too anxious」と表現されていましたが、盲導犬になる犬は、どのような状況でも自信を持って行動できないといけないんです。

「やっぱり、突然知らない人の家に行かせたりしたのが問題だったんでしょうか?」
「そんなことはないですよ。引き取っていただいたパピーウォーカーはベテランで、今まで何匹も育てていますし」
「私の膝のせいで、トレーニングが十分ではなかったんでしょうか」
「そんなことはないですよ。モリーは残念ながら盲導犬に向いていなかったということです。よくあることです」

そして、アドバイザーの話によると、モリーは視力を失った男の子がいる家族にセラピー犬として引き取られることが早速決まったとのことでした。

セラピー犬も、目の不自由な方の大きな助けになります。視力を失って精神的に不安定になる人も多く、そうした人を慰め励ます大きな力になることができます。また視力障害のある子供が、盲導犬と一緒に暮らすことになる将来の生活に備えて、犬のいる生活や犬の世話に慣れるためにペットとして引き取られることもあるのです。モリーは、後者の方でした。一時的にその家族の家で暮らすのではなく、ペットとして引き取られるとのことでした。

「その男の子のご家族は、大変喜んでいらっしゃるんですが、様々な準備が必要でしてね、その子の家に行くのは2週間後なんです。それまでの2週間ですが、モリーを預かっていただく家族が必要なんですが、興味がありますか?」
「あります、あります、預かりますっ!」
「ああ、でも、ヒロコさんは膝が痛いんでしたよね…」
「いえ、もう大丈夫なんです。モリーがいなくなってすぐに手術をしたんですよ!今では普通に歩けるんですっ!」
「そうなんですか!じゃあ、預かっていただけるんですね!」
「はい!今から行きます!」

実際は、翌朝まで待たなくてはなりませんでした。電話があったのは夕方で、外は真っ暗でしたし。私は、早速、夫に電話をしました。

「ええっ!ほんとに!やったぁ!ヒロコ、今すぐ行って!」
「今はダメでしょ。もう真っ暗だし、犬舎も閉まってるよ」
「いや、あそこはいつでも人がいるよ。行けば開けてくれる!」と大興奮。

まあ、こうしてモリーが我が家に戻って来たのでした。

引き取りに行った時は、皆さんご想像のとおりでね、「モリー!」と呼ぶと向こうから猛スピードで走って来まして、私に飛びかかってきました。顔をペロペロと舐めまくり、ちぎれんばかりにしっぽを振り、ヒンヒンと鼻を鳴らして狂っちゃいましたね。

盲導犬にならないのだから、もうどんな遊びをしてもよいと言われまして、フェッチ(ボールを投げて取って来させる遊び)や綱引きや庭を駆け回る遊びを思う存分やらせてやり、私達は2週間大いに楽しく過ごしたんです。

おトイレに外へ出してやったら
泥遊びをしていたらしい

再び訪れた別れは、最初の時ほど辛くなかったです。その男の子の家族に愛され可愛がられると分かっていたし、おばあさんになるまでずっとその子と一緒に楽しく幸せに暮らしていくことだろうと思うと、安らかな気持ちで2回めの「さようなら」を言うことができました。

しばらくして、その男の子の家族からGuide Dog Victoria を通して写真をいただきました。

心配顔のモリー

ぬいぐるみに囲まれてちょっと戸惑い気味。モリーの「心配顔」は、すぐに「幸せ顔」に変わったことでしょう。


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2 件のコメント:

  1. ウォンバット2015年10月20日 22:18

    コメントありがとうございます。おひさしぶりです、たしか以前はRingwoodに住んでらしたんでしたっけ?お引越しされたんですねーユーカリの木のパワーで皆さんの健康が維持されますように。

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  2. Ringwoodのすぐ近くのユーカリの木が茂るエリアです。ブッシュファイアが心配なんです。昨年の夏には、3キロほど離れたところで山火事がありました。煙がすごくてね、怖かったですよ。もはや人ごとではありません。

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