2025年6月5日

始める前に相談して欲しかったけど

うちの夫は、仕事が休みだった昨日、朝から活動的でした。

双極性障害の夫には周期的な気分の波があるんですが、先月は元気が無くなって「うつ状態」になりかけていたんですけど、最近は元気いっぱいで「イライラして怒りやすい」状態なので、気分の波が「躁状態」の方に振れているのかもしれません。

私がレシピサイトのアップデートをしていると、すぐ横のデスクに座っていた夫が電話をかけ始めました。相手が電話に出なかったらしくて、留守番電話にメッセージを残しました。

「ああ、もしもし。私はコレコレという者ですが、自分の身体が必要なくなった時に身体を寄付したいので登録の手続きを始めたいです。電話番号はコレコレです。ご連絡お持ちしています」

何ですってえ?

「献体するの?」
「そうです。ボクの葬式はしなくてもいいですよ」
「いつ決めたの?」
「昨夜です」

手続きを始める前に相談して欲しかったですけど、献体したいと言い出したことには全く驚きませんでした。うちの夫らしいと思います。相談されていても「ああそうなの、分かりました」で終わっていたでしょう。


うちの夫は、一昨年「Australian and New Zealand Paired Kidney Exchange (ANZKX) Program」という生体腎臓移植プログラムに参加して、どこかの誰か知らない人に腎臓を一つ提供したんです。

これは「患者と提供者のペア」で参加するプログラムで、患者さんが誰かの提供を受けて移植手術が行われた後に、ペアの提供者がどこかの誰かに提供するというエクスチェンジプログラムなんです。

うちの夫が参加した回には、夫の提供をスタートにして提供→移植→提供→移植…がつながって16人の患者さんが移植手術を受けることが出来たという話は、これまでにも度々話題にして来ました。

夫は献血にも熱心に取り組んでいて、これまでの献血回数は80回を超えています。死亡後に臓器や身体の組織を提供するドナー登録や骨髄バンクのドナー登録もしています。

でも、自分の身体を最も有効に利用してもらうには、メルボルン大学医学部への献体が最良の方法だと考えたようなんですよ。

医学部の研究者や学生達のトレーニングや研究に役立つなら好きに使って欲しいそうですけど、自分の身体や脳は普通の人以上に研究に役立つと確信しているらしいんです。

まずは腎臓です。腎臓を一つ提供していますからね、残った一つの腎臓がどのように変化するかを研究するのに役立つはずだと言います。

また、遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」とか肝臓や膵臓に鉄分が過剰に蓄積する「ヘモクロマトーシス」とか遺伝性の病気がいくつもありますから、そうした研究にも役立つだろうと言います。

留守番電話にメッセージを残して2分後、メルボルン大学から電話がかかってきました。登録申請書類がメールで送られて来ましたので、これから手続きをするそうです。本人がここまで熱心なんですし、腎臓の件だけでも献体する価値があるでしょうから、うちの夫が死んだら葬式をする必要は無さそうですよ。

死亡後に大学に連絡をすると、大学が遺体の搬送を手配して、その費用も大学が負担して行うそうです。ですから、献体の条件として大学までの距離というのがあるんです。

全ての利用が終了した後は火葬され、家族が希望すれば遺灰を引き取れるそうですから、夫の希望通りに実家の牧場の丘の上に撒くことも出来るんでしょうけど。

遺灰をどうするかとかは私達家族と相談してから決めて欲しいと言いましたら、もちろん相談して決めると言いました。娘が帰って来た時に家族4人で話し合って決めるそうです。

ちなみに、うちの夫は肥満問題はありますけど、至って健康なんですよ。私よりも長生きすると思います。献体の話は、いつか死んだ時にということですのでご心配なく。


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