2025年4月21日

映画「Warfare」を観て思ったこと

昨日はイースターの日曜日。十字架にかけられて処刑されたキリストが復活したことを記念する日ですが、オーストラリアでは祝日です。クリスマス同様に非常に重要な祝日なので、うちの夫が勤めるツールショップも休業でした。

映画でも観に行くかと珍しく夫が誘ってくれたので、昨日は目まいのせいで運転が不安だったんですけど行くことにしました。度々このブログに書いていますが、うちの夫は目が見えなくなって来ているので車の運転が出来ないんです。どこかに出かけるとなると、私が運転するしかないのですよ。

「Warfare」 (ウォーフェア)という映画を観に行くことにしました。戦争映画です。

私は戦争映画は好きではありません。最近は、戦争を美化したような話ではなくて、戦争の悲惨さや理不尽さを描いた映画もありますけど、そういう映画をわざわざ映画館まで観に行きたいとは思いません。見終わって虚しい気持ちになるだけですからね。

それなのに、なぜ「Warfare」 という映画を観たいと思ったかと言いますと、まずこの映画は元アメリカ海軍特殊部隊員のレイ・メンドーサという人がイラク戦争中に経験したある出来事を再現したものだというのが理由でした。ある意味、ドキュメンタリーのような映画なのです。

レイ・メンドーサさんは、アレックス・ガーランド監督の映画「シビル・ウォー」で軍事アドバイサーを務めた方です。この方が、ガーランド監督と共同で脚本を執筆し、共同監督を務めたのが「Warfare」です。

脚色も作り話も一切なし。自分の記憶と同じ場所にいた他の隊員たちの記憶を元に作った映画だと聞いていました。

メンドーサさんの親友だった隊員の一人エリオット・ミラーさんは、この出来事で重症を負い、今も障害を抱えて生きておられますが、脳損傷のために記憶を失ったのでこの出来事を覚えていないそうです。ミラーさんに何が起きたのかと聞かれて、メンドーサさんは図を描きながら説明したそうですけど、ミラーさんにはよく分からないままになっていたそうです。

その出来事を再現してミラーさんに見せる、そのためにこの映画を作ったそうです。だから、この映画「Warfare」は、エリオット・ミラーさんに捧げられているんですよ。30分の映像にも出来たけど、フルスケールの映画にすることになったんだそうです。

戦地や紛争地に派兵された兵士の多くがトラウマ経験のためにPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみますが、兵士達がどのような経験をしているのか、その一端を知ってもらうためという理由もあったそうです。

イラク戦争の政治的な背景の説明も登場人物を知るための説明も何もありません。ただ、彼等が経験した一つの出来事を再現しただけの映画です。

メンドーサさんにとっては、ガーランド監督と脚本を執筆した過程が、まるで心理セラピーを受けているようだったそうですよ。心の中に閉じ込めていた記憶や思いを出し切ったからでしょう。

近年注目されている若手俳優が多数出演しています。キャストの俳優達は、撮影前の3週間半を共に暮らしてトレーニングを受け、強い絆で結ばれたそうです。小隊のリーダー役だった俳優達がトレーニング中のリーダー役を任されたそうです。撮影に要したのは5週間。約2ヶ月間を毎日ずっと一緒に行動し、兵士達が抱くのと同じような仲間意識や兄弟愛を育てたそうです。

ということで、観て来ました。


上の予告編も良く編集されていますけど、絶体絶命の状況に追い込まれた兵士達の恐怖と緊張は全編を観ないと分かりません。

観終わって、夫も私も最後のクレジットが終わるまでちょっと立ち上がれませんでした。「PTSD(心的外傷後ストレス障害)になるのも分かるな」と思いました。

夫は、同じツールショップに勤めていたJさんのことを考えたそうです。Jさんは元オーストラリア陸軍兵士なんです。アフガニスタンに派兵されていた時に、爆発物のために片方の耳が聞こえなくなりました。

Jさんは陸軍の衛生兵でした。大変優秀な方ですけど、退役後はストレスのない暮らしを望んで、自宅から近いツールショップの店員をされていたんです。陸軍時代の詳しい話はうちの夫も聞いていませんが、衛生兵だったのですからトラウマになるような経験をされたに違いないです。

映画「Warfare」は、多くのメディアのサイトで高評価を受けています。

俳優達が演じているとは思えないほどリアルで、トラウマを思い出させる可能性もあります。しかし、この映画のお陰で話せなかったトラウマ経験を話せるようになったという兵役経験者もいるそうですし、PTSDの問題を抱える家族や友人をより理解出来たと話す人も多いそうです。

ぜひ皆さんもご覧になってくださいとお勧めしませんが、私は観て良かったと思いました。

映画なんですから全て作り物なんですし、全て俳優達が演じているわけなんですけど、よく作ったなと思いました。今年公開される映画の作品賞候補に入るのは確実だと思います。


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